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考える人々 ・青山 裕都子さん ・橘 真さん ・内田 樹さん ・藤田 功博
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■12月の問い
「フリーターのどこが問題ですか?
そもそも、仕事ってなんですか?」

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今月は質問が2つあるようですが、「フリーター」については、2004年1月5日発売の「仕事」特集の『ミーツ』にて、内田先生からの回答や今回の問いをくれた藤田さんの調査報告などを頂き、みっちりとその研究をしているので、そちらを読んでいただけたら…と。手前味噌ですいません。

だから、今回は“今の時代に、「仕事」というものをどう考えたらよいのでしょうか? 青山さんにとって、「仕事」とはなんですか? 今までの経験を通じて、「仕事」というものをどのようにとらえていらっしゃいますか? お聞かせください”

ということをちょっと考えてみたいと思います。



 昭和の後半に駅前から新興住宅地行きのバスが何本も出るようになった、かつて漁村だった西神戸の街の駅前で、ワタシの父はパチンコ店を経営していた。今の郊外型パチンコ店と違い、どちらかといえば商店の風情を漂わせた昭和のパチンコ店。商店街の一角でもあり、店の裏口は公設の市場に繋がっていた。魚屋、毛糸屋、中華の店…そんな中にある遊技場が父の仕事場であったせいか、ワタシには「仕事」という概念よりも、「働く」ということは「商売」だった。いわゆる会社勤めをするオトナが親戚一同を見渡してもほとんどいなかったので、「職につく」という考え方も知らなかったような気がする。オトナになって、「働く」ということは「商売」で、それは美味しいものを食べたり、大きな家に住んだり、きれいな服を買ったりする、つまり生きてゆくために必要なものだと思っていた。仕事とは生業なのだ。

※商売にもいろいろあるけれど、パチンコ店から生まれるものは利益か損失かしかない。ビジネスは本質的にそういうものだけれど、ばくち商売には本当にそれしかない。お金とモノを交換するのではなく、お金とお金を交換するだけなんだから。とワタシは思う。

ウチの父は、「女は家にいるもので、外で仕事をするものではない」という考えだった。それは「女は働くな」ではなく「女は金儲けをするな」だったんじゃないだろうか。父にとって仕事は「商売」=金儲け、その目的は家族を養うことにある。だから、扶養目的でない「仕事」は彼にとっては「仕事」ではない。ワタシが働きだして「仕事が忙しい」などとぽろりぽろりとこぼす時、父はよくこう言った。

「仕事、仕事ってえらそうに。じゃあお前は誰かを養っているんか。自分の為に好きでやってるんやろ。そんなんは仕事じゃない」

バブルの残り火がくすぶっている平成の初頭に、不況に強いといわれるパチンコ店を父は潰した。担保に入っていた実家を売却することで借金こそ残らなかったが、50代の働き盛りに店を、「商売」の手段を失った。でも、不思議なんだけど、なくなった途端にパチンコ店を経営していたことは「商売」というより「仕事」だったと思う方が、しっくりくる。なんでだか。わかんないんだけど。

だけど、そこに鍵がある気がした。



ワタシは今、ミーツの編集部に在籍していて、月刊誌を発行するために、取材に行ったりこうして原稿を書いたり誰かと会ったりモメたりくだを巻いたりパラパラ他の雑誌くってみたりしているんだけど、改めて「それが仕事か?」と問われると、なんだか違和感があるし、そんなことの全てが「仕事」て割り切ったらできへんわ〜と思う。「商売」かというと、それはあると素直に思うんだけど。

でも20年後、ワタシが誰かに「30歳の頃何の仕事していたの?」と聞かれたら、「ミーツという雑誌を作っていました」と言うような気がする。ということは、ワタシの中で「仕事」というのは「割り切る」、つまりきっぱりと何かから切り離す、納得して初めてわかるというもの。そして現在進行形はありえない概念、ということのようだ。そんなことがわかっても「で?」って感じなんだけど。

そうしてモワモワとなった「仕事」に関して、確信することがひとつだけあって、ワタシが今は「仕事」ではないけど、後になったら「仕事」だったと思うようなことの中心には、たぶんものすごく「仕事」的な何かがあるはずだ。ということ。

それがなかったら、もしかしてそれが「仕事」かもしれないという微妙な確信を感じることがないはずだから。そうでないようなものはやっぱり「商売」なんじゃないかと思ってたら、内田樹先生が以前にミーツの連載コラムでこんなことを書かれていたのを思いだした。

(引用はじめ)
 仕事そのものが「土を掘り、また元に戻す」というような非生産的なものであったとしても、そこに「パスを出す相手」がいれば、そこに「財貨とサービスの運動」があれば、人間はそれを楽しむことができる。
 仕事を通じて私たちがしようとしているのは「パスを出す」ことである。
(引用終わり)



「ミーツを作る」ことは仕事ではないけれど、「ミーツを作って読者に届ける(売る)」ことは今のワタシの仕事なんですね。だからこそ作っている今の瞬間ではなく、振り返ってみてはじめて「仕事をしていた」と思えるんだろう。

そうかぁ。それやから、同じ一生懸命死にものぐるいでモノ作りにとり組むなら、マジックマッシュルームとか作るよりも、それを誰かに渡した時にいい影響や感動を与えられるモノを作る方が、「ええ仕事」な感じするよね。

ちなみになんで父がパチンコ店を潰してしまったかというと、「街に溶け込むシックなパチンコ屋さん」を作ってしまったからなのです。社会悪みたいに思われている遊技場を、社会の中で違うポジションにもっていきたかったみたいなんだけど、誰も地味なパチンコ屋さんに行きたいなんて思わへんわな。



【プロフィール】
青山 裕都子

懐に隠した真剣で、世の中を一刀両断する豪腕編集者。見かけに油断し腕一本取られた者多数。 雑誌「Meets Regional」の副編集長でもある。ナイトライフにもそのパワフルさはいかんなく発揮され、本拠地である神戸を千鳥足で日々開拓中。
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