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考える人々 江 弘毅さん ・青山 裕都子さん ・内田 樹さん ・藤田 功博
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■1月の問い
「就職活動を始める人へ、
アドバイスをするとしたら?」

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僕は大学4回生の時に会社をつくり、今もその会社を経営しています。3回生の冬から4回生の春にかけてのいわゆる就活シーズンは、会社立ち上げの準備で走り回っていたので、エントリーシートというものすら書いたことがありません。

なので、自分であげておいたテーマにもかかわらず、あまり有益なアドバイスができるかどうかはわかりません。しかし、同じ年代の学生たちを、友達として見ると同時に経営者としても見ることができるし、一足先に社会とのかかわりを持ったので、今就活をしている学生が見えていないものを少しは見ることができているのではないかと思い、アドバイスを書きたいと思います。

まずは、こんな話。

「学生起業家」というのがまだ目新しい素材のようで、たまに雑誌やサイトのインタビューを受けることがあります。インタビューの早い段階で、「なぜ就職しなかったのですか」とか、「どうして会社を興そうと思ったのですか」などという質問を受けます。

「人生一回きりですからね、やりたいことやらなやきゃ損じゃないですか。だから思い切って始めたんです!」

というような答えを聞き手は期待してるのだと思うのですが、 僕はそう答えません。

本音の話、僕にとっては起業に対してそれほど強烈な動機があったわけではありません。でも、自分で会社を作って、自分の給与は自分で稼ぐというスタイルを一番優先したかったのは事実です。

もっと具体的に言えば、自分の能力を適切に見極めて、評価してくれるであろう会社なんて存在しないという変な自信がありました。また、ゼミで企業分析などもしていたために、あらゆる企業に長所と短所があることがはっきりわかり、大きな企業ほどその短所に目が行ってしまいました。顔はかわいいけど性格は最悪だとわかってしまうとその女の子とはつきあえないように、有名で格のある企業でも、業界的に明らかに先行き不安だったり、あまりにも巨大なピラミッド型組織だったりということがわかったのでその企業に行く魅力が薄れてしまっていたのです。

2回生や3回生の頃は漠然と就職活動も視野に入れていたのですが、いざ企業や職業のことを知ってみると、やりたいことがどこにもなかったという感じです。



銀行員や証券マンなどは単なるマネーゲームのプレイヤーに見えたし、教師をできるほど自分がオトナではないと思ったし、損保や生保の営業マンなら他の人にやってほしいと思ったし、バレーボール選手は高校であきらめ、ミュージシャンは元々無理、宇宙飛行士も興味ないし、学者や研究者は退屈そうに見えた。

というように、いろんな選択肢を「やりたくないから」という基準で消していったら、自分で会社を経営するという選択肢が残ったというわけです。

いざ実際に会社を始めてみてやっていることというのは、財務データを基にした各種経営戦略の立案と、トップダウン型でありつつフラットな組織作りです、と言いたいところですが、そんなキラキラしたものではありません。

文章も書き、写真も撮り、オフィスにあるパソコンにソフトをインストールしたりトラブル修理したり、風邪をひいたスタッフの家にリンゴを持って行ったり、お歳暮を買い出しに行ったりというような「見回りと保守点検」がメインです。(もちろん企画や営業もするけれど、それは仕事のごく一部です。)

経営者の仕事は経営だというのは当然ですが、実は経営というのは、数字から将来の計画を立てるとかいう経営学的なことよりも、「誰にどういうことをさせたらスムーズに進むか」という人員配置の問題、そして「自分の会社がやるべきことは何か、社会においてどういう位置づけで存在し、どういう役割を果たすべきか」といった哲学的な問いを考える仕事だと思っています。

「自分の会社のスタッフが、何をやりたいか、何に向いているかを見つける。仕事が生まれた時に、それを誰にやらせるかを適切に判断する。そして、それにスムーズに取り組めるように環境を整える」ということが経営者の仕事だと思います。裏方でありマネージャー的な仕事でありつつ、時には自分のやりたいことにも手を出せる、かなり自由なポジションです。

そしてこれこそが、僕が一番興味を持って取り組める仕事だと思っています。積極的な消去法を用いて、自分のやりたくないことをどんどん消していって、残ったものであれば、十分幸せを感じて取り組めるのだということを、改めて感じています。(ただし、遅刻しても誰も叱ってくれないからダラけるのを防ぐのが大変です。また、最終責任が自分に発生する以上、周囲に相談しつつも最後はすべては自分で考えて自分で決めないといけないので、孤独感を味わうこともあります)



やや話がそれました。まとめに向かいたいと思います。

就職活動が始まると、適性診断やその他の情報源から否が応にも「自分は何がやりたいのか」「自分は何に向いているのか」などを意識させられます。こういうときに、頭で考えて自分のストライクゾーンというか、好みの職種をひねりだそうとしないほうがいいと思います。上記の問いの答えを見つけだすのはかなり難しいことだからです。

学生の時に経験していることって、世の中に存在する事象のうちほんのわずか。世の中とつながるチャンスであるアルバイトですら、コンビニとか飲食店とか、家庭教師とか、自分の将来とあんまりつながっていないものが多い。

3回生の冬、そして4回生の時点で自分の将来を設計するには、あまりにも材料が揃わなさすぎていると思うのです。だから、そのような材料不足の段階では、自分が直接見聞きしたことのない分野の職業についての適性を見極めることはやめたほうがいいと思います。大学時代に経験したことの中で、自分に向いていることを見つけられた人は、とてもラッキーだと思います。たくさんの数のくじびきが入った箱の中からいくつかを引いたら、3等賞や2等賞、もしくは1等賞が出てきたようなものだと思います。

くれぐれも、就活する時点で、「自分に向いてることを見極めないといけない」というような強迫観念にとらわれないことだと思います。



大事なことは、まずいろんな職種を知ること。本とかサイトで情報を集めるのではなく、自分で肌で感じることです。そしてその経験を通して得た自分の直感を信用して、取捨選択を行うこと。自分が見聞きしたことのない職種は、「もしかしたら自分に向いているかもしれない」「自分がやりたいことかもしれない」という可能性が少なからず存在しているということです。

自分が体験的に知らない職種に関しては、そこで自分が活躍できる可能性を見逃しがちだ、ということに気をつけてほしいのです。

そしてまた、あらゆる業界は人手不足だし、あらゆる経営者は有能な人材をたえず求めているということも知ってほしいです。

ここでいう、「有能な」というのはもちろん、働いた初日から頭角を現せるような即戦力的スキルと「素材としての可能性」の両方を意味します。

就活生の誤解に多いのが、後者についてです。自分がその職業についてどれくらいの可能性を持っているのかというのは、人に判断されるものではなく、自分で判断すべきものです。もっと言えば、自分でわかるものです。

ややこしい言い方になりますが、「職業に関する適性」とは、「その職業に適性があるかどうかを自分で見きわめられる能力」のことを意味します。

3ヶ月とか半年とかその職業についてみて、その職業に自分の適性があるかどうかわからないのであれば、「向いていない」ということです。

もしくは、その仕事を始める前から、何らかの取り組みをしていないと、うまくいかない場合も多いです。
 

例をあげてみましょう。うちの会社にやってくるのは主に、「ライター志望」と「Web制作スタッフ志望」の人たちです。

「ライター志望」の部門に関しては、今までに日記でもミニコミ誌でも何でもいいから書いていた人と、「入ったらがんばりたいです」という単なる憧れだけの人とでは大きな違いがある。、「Web制作スタッフ志望」の部門に関しては、「自分ではまだサイトを持っていないのですが」なんて人に逸材はいません。

「入ったらがんばります」型の人は、仕事に関して大きな勘違いをしているのだと思います。仕事は手を挙げた人にまかせるものではなく、できるだろう、やりとげられるだろうと思う人にまかせるものなのです。

逆に言うと、何かの仕事をまかせてほしい、やりたいというのであれば、相手にそれをわかってもらって信用してもらえるだけの何かが必要になります。それは目に見えるものであったり、目に見えないものであったりします。

入社面接でも同じだと思います。短時間の面接であっても、回数を重ねれば、「就職希望者がどういうことをできるか」ということに関してかなり正確な判断を行うことが
可能です。面接官は、具体的に言えば「この人にうちの会社の仕事をまかせられるだろうか」という視点でのみ見ているのです。

この判断に関しては、単なる面接よりも実際に一緒に働いてから判断する方が正確なので、現在ではインターンシップを積極的に活用する企業や、アルバイトで一定の期間を経た人から社員採用を行っていくというスタイルが増えています。

逆に言えば、ミスマッチを防ぐためにも、面接という真っ向勝負に出ず、希望する業種に近い業種のアルバイトから昇格を狙っていくのが遠回りのようで一番確実な方法だと思います。



上記のように、企業側としては、仕事を「まかせられる人にまかせたい」というだけなので、習慣的なだけの新卒採用は今後減っていくはずです。それよりも、一度一緒に働いてから社員採用を判断する方法だとか、他企業からの引き抜き、転職などがますますさかんになっていくでしょう。

新卒でいい会社を見つけられなかったとか、いい会社に採用してもらえなかった、
もしくは全く採用してもらえなかったというのは確かに辛いことです。しかしそれ以上に不幸なのは、自分の適性を全く見つける努力をしないまま、就職先が決まってしまうことです。

繰り返しますが、自分の適性を見つけるというのは本やサイトをながめて頭で考えることではありません。判断材料は、すべて経験の中から見いだすべきだと思います。

自分の直感を大事にして、それに身を委ねることにビビらないことがとても大切なのではないでしょうか。

就「職」活動であり就「社」活動ではないことに、常に気を付けてほしいです。



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