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■2月の問い
「自立するということ」
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「自立するためにはどうしたらいいのでしょう」と問いかけてきた人がいる。それは「借金を返したいので、お金貸して下さい」と言っているのと同じことだよと言って聞かせる。
自分のことは自分で決めて、そのリスクは自分で引き受ける。自立というのは、煎じ詰めればそれだけのことだ。リスクは自分ひとりで引き受け、そこから得られたベネフィットは他人と分かち合う。
社会性というのは煎じ詰めればそれだけのことだ。自立していない人間は当たり前だが社会性がない。社会性がなければ、人間が社会で生きてゆくためにいちばん必要な資源が得られない。人間が社会で愉快にかつ威信をもって生きて行くためにいちばん必要なのはお金でもないし、愛でもない。敬意である。
他者からの敬意だけではない。大切なのは「自分に対する敬意」だ。そのことをアナウンスする人がほんとうに少ない。
「私は愛が欲しい」「私はお金が欲しい」と言い立てることが人間として正直なことで、よいことだと思っているひとがいる。
その人は正直であることによって、その人の値打ちが下がることもある、という当たり前のことに気づいていない。そのような言葉を一回口にする毎に、その人は大切なものをドブに棄てているのである。
「誰にもめーわくかけてないから、いいじゃないか。ほっといてくれよ」というようなエクスキューズで、売春したり、コンビニの前の道路にへたりこんでいる高校生がいる。
彼らは「自分は社会人として最低のラインだけはクリアーしているから、それでいいじゃないか」と言う。
別にいいよ。
でも、自分自身に「社会人として最低のライン」しか要求しない人間は、当然だが他人からも「社会人として最低の扱い」しか受けない。そのことはわきまえていた方がいい。自分の弱さや愚かさを「大目に見てくれ」と言って甘える人間は、自分の持っている最も高価なもの-自尊心-を捨て値で売り払っているのである。
一度失った金を取り返すのはたいしてむずかしいことではない。一度失った愛を取り返すのも不可能ではない。でも、一度失ったら、「自分に対する敬意」は二度と取り返すことができない。
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【プロフィール】
内田 樹
神戸女学院大学教授。語り口は柔らかく、それでいて切れ味は抜群の哲学者。驚異のハイペースで出版される書籍は、出されるごとに、「世の中の見方が変わった」というファンを生み出し続けている。2003年に刊行された「疲れすぎて眠れぬ夜のために(角川書店)」と、「子どもは判ってくれない(洋泉社)」はとにもかくにも必読の書。HP「内田樹の研究室」でも読み応えのある日記を公開中。
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