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考える人々 ・平川 克美さん(1)(2) ・内田 樹さん ・岩井 克人さん(1)・(2) 
ほぼ日刊イトイ新聞「続・会社はこれからどうなるのか? 岩井克人×糸井重里対談篇」の第4回より引用・再編集して転載しています。

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■3月の問い
「会社にとって本当に大切なもの」
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わたしが、
この本の後半で言おうとしたのは、
「資本主義が大きく変わりつつある」
ということなんです。

だからこそ、
終身雇用制も年功序列制も
いまの会社では、解体しつつあるわけです。
サラリーマンの生活を選択することに対して
不安を抱く人も、増えているんです。

この本では、なぜ、
会社がそうなったのかを、説明しています。
その一部を、ここで申しますと……。

1970年代あたりから、
先進資本主義国において、
産業資本主義から、ポスト産業資本主義に、
資本主義のかたちが移りかわりつつあるんです。
高度情報化社会とか知識社会とか、
いわれてもいます。
その実際が、どういうことかを言いますと。

もともと、
利潤は、差異からしか生みだされません。
産業資本主義というのは、
「多数の労働者を使って大量生産をおこなう
 機械制工場システムにもとづく資本主義」
のことです。

もちろん、たんに工場があっても、
それだけでは、利潤は生まれません。
あたりまえですが、費用が収入より
低くないといけないわけですが、
それは結局、労働者の賃金が
その生産性よりうんと低ければいいわけです。

この
「労働生産性と実質賃金率の差異」こそが、
産業資本主義の利潤のもとだったんです。
そして、そのような「差異性」を保証したのが、
農村における過剰な人口であったのです。

つまり、
安い賃金でも働きたい労働者が、
農村から都市にどんどん流れこむかぎり、
産業資本主義は、成り立っていた。
これは発展途上国では、
現に存在している資本主義です。


しかし、先進資本主義国の中では、
産業資本主義の拡大がいつしか、
過剰人口の産業予備軍を使いきってしまった。
その結果、「実質賃金率」があがりはじめて、
「労働生産性」との差がなくなっていきました。

労賃が安かった時代では、
機械さえ持っていれば、
ほかの企業と同じことをやっていても、
必然的に、
利益を生み出すことができたんですけど。

だが、もはやそういう産業資本主義のしくみを
使えない……。
差異性を意識的に作りださなくちゃ
利益が生み出せなくなってしまった
時代になったのです。

それが、ポスト産業資本主義です。

差異性を生み出すということは、
そちらの「ほぼ日」もそうでしょうけれども、
情報を提供したり、
広告をやったりとかいう、いろんなかたちで
ほかの企業とは「違ったこと」をやることで、
それによって利益を生み出す。

でも、違いは、じきにほかの企業に
まねされてしまいますね。
だから、つねに違っているためには、
新しい技術や新しい製品を作ったり、
新しい市場を開拓したり、
新しい経営方法を発明したり、
そういう新しいものが、必要になるんです。

それが、われわれの生きている
ポスト産業資本主義社会の特徴です。
われわれは日々、
何かに追いたてられるように
忙しくなっているというのは、
そういうことです。


ところが、その、
「新しい差異を、
 常に作っていかなければ、
 利潤は生まれない」という原理が
同時に何を意味しているのかというと、
「もはや機械ではなく、
 人間がもっとも価値をもつ社会である」
ということです。

利益を生み出すためには、
違いを生み出さなければならない。
それが、はっきりしたからです。

「違い」っていうのは、どこかに
ポロっと転がってるわけではなくて、
人間が作りださなくちゃならないですよね。
その違いを生み出す
能力や知識をもっている人間が、
いちばん価値を持つ存在になっているんです。

差異を生みだすのは人間だけど、
人間は、機械と違って、自由意志を持っている。

人間にたいして、
おカネができることは、せいぜい、
ある時間の労働力を買うだけですよね。
たとえ奴隷にしたところで、
人の考えていることまでは
コントロールすることができません。

これまでは、
おカネを持っていれば機械を買えた。
その時代は、機械をもてば、
ほぼ自動的に利益を生みだせたからこそ
おカネに力があったんですけど、
今はおカネがあっても、
おカネでは人間を
まるごとコントロールできないわけです。

ということは、
会社の中では、
おカネの最終的な提供者である
株主の力っていうのは、
従来から比べたら
弱まってしまったということなんです。

会社の中に生きている人や、
これから会社を作ろうとしている人は、
おカネではなく、人間が
本当の意味での資本になっているのだ、
そういうことを意識していないと、
将来の方向を、見誤ってしまいますよね。


ほぼ日刊イトイ新聞「続・会社はこれからどうなるのか? 岩井克人×糸井重里対談篇」の第4回より引用・再編集して転載しています。

【プロフィール】
岩井 克人

東京大学経済学部教授。経済や会社などの構造を身近な言葉で明らかにしていく経済学者。経済社会の中に当たり前のように存在するものを、きちんと言葉で解釈していこうという姿勢は、現代のアナリストや学者にはほとんど見られないものである。著作である「不均衡動学」以来、「主流派理論の枠組みのなかでその理論を主流派以上に徹底的に追及すると、主流派経済学の前提が壊れてしまう」という、ゲーム理論的・戦略的な視点が根本にある。「世の中そんなに簡単にモデル化できないよ」というスタンスこそが身上。

会社はこれからどうなるのか』(平凡社、03年)

ヴェニスの商人の資本論』(筑摩書房、85年)

貨幣論』(筑摩書房、93年)


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