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■6月の問い
街的ってなんですか?
いい店ってなんですか?

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ミーツ2003年6月号 119ページ「街遊びの入り口」 より引用しています。

「雑誌を見て来ました」と
ニコッと言えるかどうかで
店の扉は開きも閉じもする。


ガイドブックや雑誌を見て「おしゃれな店」や「おいしい店」に行く、というのは今的な街遊び事情において、一般的な行為だろう。ミーツ読者の目的も大半は「エエ店、載ってへんかなあ」というものに違いない。

ところで、街とのかかわりにおいて「パーソナルヒストリーが重要」とはミーツによく見る表現だが、ここに実は難儀な問題が横たわっている。読者の多くは、そもそもパーソナルヒストリーが希薄だから、ガイドブックや情報誌に頼っているはずだ。そして彼らにとってミーツのポジションは、「より信頼できる情報がありそう」てなところだろうから、パーソナルヒストリーうんぬん・・・に対峙した際の態度としては以下のようになるのではないか。

1)「じゃあ、私たちはどうしたらイイんですか?」と教えを乞う。
2)「どうせ自分たちの世代、中身薄いっスよ」と拗ねに入る。
3)「街、街ってウザいんだよ。旨いメシ喰いたいだけなんスから」とブチ切れる。

順番に行く。(1)は素直でおりこうな態度だが、ここでカンタンに「だよね。そんな時はこうしたらイイんだよ」とショートカットしてしまった結果、街的ではないマニュアル人間を大量に生んでしまった。なので、本稿を100回ほど、心して読まれたし。(2)は世代というスケープゴートに問題の本質を回避しているため厳重注意。もっと素直にならないとイケンよ。(3)は実のところ、最もきちんと面倒を見てやらないといけないのだが、ひとまず「旨いメシを食いたいだけ」なんてナメた態度では街で旨いメシは喰えない、と一発ドツいておく。

では、そのような「希薄なパーソナルヒストリー」を埋める、あるいは構築するという作業は可能なのだろうか。

ハイ、可能です(あっさり)。そもそもパーソナルヒストリーなんて「その時の自分にとって都合よく構築された物語の蓄積」でしかない。だから、下町で商売人の家に生まれても物語がない輩もいるし、のっぺりしたニュータウンでも面白いコトはある。一般論で括るのは、それ自体が街的でない。

街で遊ぶ、つまり見知らぬ人の気配を常に感じながら、自分の居場所を見つけていくという作業は、楽しいとシンドイがベタッと貼り付いたまま進行する。一方でガイドブックや情報誌は、そのシンドイ部分を「見ないように」あらかじめ構造化されている。なので、ろくにメニューも見ずに写真で紹介されていたものをそのままオーダーしたり、クーポンを使ってトクをする・・・なんて横着なやり方が敷延し、「中身のない遊び方」だけが拡大していくわけだ。

ここにおいて要請されるべきは、「私は本を見て店を知っているから。こう利用する」ではなく、「本に書いてあったことしか知らない」という、意識の置き方なのであろう。

シェフはどこそこで修行してキューソンの技術に長け、だからグランメニューの鴨はハズせなくて。大将は素材を熟知し、全国に仕入れのルートを持っているから「おまかせ」にするのが正解で。などと書いてある以上のものが店には必ずあるのに、多くの情報の受け手は「紹介された通りであること」によって安堵してオシマイなのだろう。が、それでは面白くなりようがない。「本に書いてあったことしか知らない」との意識の置き方、畢竟、街や店と接する際のもっとも誠実なふるまいー「○○の本を見て来たんですけど」と、フレンドリーに挨拶する/できることとなって立ち現れる。そうできるかどうかで、店や街が近づくか、遠ざかるかが決まってくるはずだ。



【プロフィール】
堀埜 浩二

文体からにじみ出る男くささが何とも言えぬ魅力を醸し出す、豪腕編集者。彼が書いた焼肉・カレー・カツ丼などの記事を読んでしまうとヨダレを止められない。ボクでもワタシでもなく「オレ」という視点から描かれる街の模様は、その場にいた者にしか吸えなかった空気の濃度を見事に描き出している。最近ではミーツにもあまり筆跡を見かけないが、登場の際は必読すべき編集者の一人だ。
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