源氏物語の世界よろしく、美しい京女がずずいと揃った平安の宮廷。彼女たちにとって、恋愛や結婚は自分だけの問題でなく、時には一家一族の明暗を分けた一大事。他の女性よりも美しくなければならないというプレッシャーは、すさまじいものだったに違いない。
さて、そんな女性たちの思いがじわじわと根付いたから、というわけでもなかろうが、京都には昔も今も変わらず、きれいでありたいと思う女ゴコロを掴む名品がたくさんある。
ここで、「ああ、舞妓さんのね」と知ったかぶりのあなたは、残念ながらまだ京都初心者。「京コスメ」と言うと、たしかに「舞妓さんも愛用の…」というキャッチコピーで紹介されることが多いが、その成り立ちを調べてみると、必ずしも舞妓さんのために発展したものばかりではないと分かる。何百年と言う京化粧の歴史は、そんなに簡単に捉えられるものではないのだ。
紅にかんざし、化粧筆。本当に手間暇かけて作られたものならお金に糸目はつけないという花街の豪奢な気質は、 多くの店と職人を育て、また他の土地の優れたものを京の街に呼び寄せた。その一方で、それらの品々は南座や北座などの舞台、太秦の撮影所などでも高い需要を得ていたのだ。こうしたプロ用の化粧も、その評判や噂は庶民に口コミで広まり、次第に一般向けにも売られるようになったのである。そのような経緯をたどりながら京の化粧史は続いてきた。
そして現在。かつて一般人の出入りが少なかった花街には多くの庶民と観光客が行き交い、数少なくなった花街向けの商品の需要を支えている。逆に昔は庶民の知恵として街に息づいていたものが商品となって、今度は花街や舞台で使われている。京都ならではの消費サイクルの中で、「京のいいもの」というブランド力はますます強くなっているようだ。
複雑でおもしろい京コスメの歴史。ここから京都の文化が少し見えてくる。
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