室(むろ)ができたのは、明治から大正にかけてだと言われている。だが、室を温めることで発酵を早めるという製法は、決していいことばかりではなかった。当時は、練炭で起こした火を中央に置き、その周りに漬物の樽、さらにその周りを畳やゴザなどで区切って室を作っていた。しかし、このやり方だと1つの樽の中でも熟成の進み具合に差があり、塩焼けと言って茶色に変色してしまう失敗が必ずあったのだ。当然味の悪い部分もある。何より問題なのは火事などの事故が多いことだ。そんな状況を改善したのが上賀茂のすぐき農家だった岡田六郎兵衛だ。彼は電熱線を室の中に張り巡らせることで室温を一定にし、樽の中の熟成を均一にすることに成功した。電気を使うことで火事の心配もなくなった。[すぐきや六郎兵衛]では、電気室以外は現在でも昔ながらの漬け方を貫いている。畑で種を蒔き、数回に分けて間引き、10本のうち1本を残す。そうやって厳選したすぐきを、発酵をうながす乳酸菌が好む木製の樽で漬け込むのである。この店の酸味の効いたすぐきは、昔ながらのこだわりと、進取の精神によってできているのだ。
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