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おつかいものの和菓子。

スーツをピシッと着こなしてお得意先へ挨拶に出掛けるとき。手みやげには気品あふれる上菓子屋で、季節もののみずまんじゅうを買っていこう、と足を速めること。親しい友人の家へお呼ばれするとき。近くの商店街にある餅屋さんの豆大福は、友人もそのご家族も揃って大ファンだからお土産はあれで、と思いながら身支度をする。贈る菓子を親しさや季節、状況によって使い分けられる贅沢は、京都に住んでいる者の特権だ。
交通が不便だった昔、菓子は近所の菓子屋で買うのが普通だった。京都の和菓子屋は菓子の作り置きを一切しない。新しくて美味しいうちに食べる菓子にこそ価値があるという職人の意地だと読み取ることができる。買う客の方も必要な時に買い、すぐに食べるという消費スタイルを持っており、それが和菓子屋の少量生産、売り切れ御免スタイルを定着させたに違いない。
和菓子屋は、近隣の住人や近所の家元の好みを反映する菓子を揃えて、長らく栄えてきた。だから和菓子屋を見ればきっとその街が分かる。特に特色ある和菓子には必ずや物語があり、買うと同時にその物語を知ることができるだろう。和菓子を土産にする楽しさはこういうところにあるのだ。

[御倉屋]
吾妹子(わぎもこ) スプーンですくって食べなければ口まで運べないほど繊細な白いあんが、ブランデー浸けした梅を包む。ひと口含むと、甘みよりも洋酒の香り高さがまず、喉の奥に抜けていく。舌の上で淡雪のように消える。はかない。これだけ繊細なあんをよくも人間が作り出せるものだと、ため息が出た。ブランデー漬けした梅のほろ苦い甘さを、歌人の吉井勇は愛しい女を想う切ない恋心に例えたそうだ。[御倉屋]の斬新な和菓子の数々は、「京菓子の伝統にとらわれず、創意工夫を凝らしていいものを作りたい」という初代の思いの果てに、自然と辿り着いた形だ。もちろん、奇をてらってのことではない。いい菓子を追究する、真摯な姿勢で挑む仕事がなければ、こんなに繊細なあんは作れないだろう。「菓子作りに命をかけている」、そんな孤高の姿勢から生み出される菓子に、同じ呼吸を感じた芸術家が安岡章太郎であり、堂本印象であり、大宅壮一であった。文人に愛される、鬼才の和菓子屋である。
[御倉屋]
京都市北区紫竹北大門町78
■ TEL : 075-492-5948
■ 営業時間: 9:00AM〜6:00PM
■ 定休日:1日・15日休
※「吾妹子(わぎもこ)」315円 
◆通販可能(一部商品を除く)


[二篠若狭屋]
「家喜芋(やきいも)」は、上流貴族であった近衛家から園遊会用にと注文を受け、初代が大正時代に考案した菓子。丹波産のつくね芋で作った皮であんこを包み、蒸し焼きにしている。初代は画家を志していたほどの芸術家だったため、菓子も芋の形を模した写生的なものになったとか。もちもちとした、つくね芋で作られた皮が特徴だ。中のあんこには、こしあん、つぶあん、白あんの3種類がある。家で食べる時に、家族それぞれのあんの好みで食べ分けられる。店は茶道の家元が多く家を構える小川通の南にあり、お茶会用の菓子を主に考案し続ける。「菓子を食べられた方が、お茶会にある日常の礼儀作法を心に留めてくだされば」とご主人。「ふすまの開閉も生花も、日常の作法です」との言葉に姿勢を正される。礼儀を心得るには、ゆとりある心こそ慣用。人の心を和ませる「家喜芋」ほど、作法伝道者の適役はいないだろう。
家喜芋(やきいも)
[二篠若狭屋]
京都市中京区二条通小川東入
■ TEL : 075-231-0616
■ 営業時間: 8:00AM〜6:00PM (日祝〜5:00PM)
■ 定休日:無休
※「家喜芋(やきいも)」2,100円(10個)
◆通販不可





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