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ヤマトヤ
yamatoya店内
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[YAMATOYA]の店長と話をしていると、「井の中の蛙」という言葉が浮かんだ。悪口を言っているわけではない。「井の中の蛙」には、幾つか解釈があって、その中の一つには、後にこんな言葉が続くと言われている。「井の中の蛙、大海を知らず。されど、空の深さを知る」井戸の中の蛙は海の大きさは知らないが、海も山も知っている人間や鳥よりも、空の本当の美しさを知っている、という意味だ。

何十年とわき目もふれず、一つのことに打ち込んだ人間だけが、物事の本質を深く知ることができる、という格言だ。

[YAMATOYA]の創業は、1970年。店長は、自分のそれまでのジャズ喫茶に費やした30年以上の人生を振り返って、「これは僕のライフワーク。違う世界の人と知り合えて、僕の世界はすごく深まった」と言った。

きっと、ジャズ喫茶を30年以上続けることで、到達できた境地なのだろう。

30年前も、単なるジャズが流れる喫茶店ではなく、最高級のジャズ喫茶にしようと思った。店を1階と2階に分け、2階は当時当たり前だった私語禁止の真剣にジャズを楽しむ空間。1階は、京都で初めての試みになる会話もできるフランクなジャズ空間にした。

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もちろん、スピーカーは最高のものを1階にも2階にも用意した。音楽だけでなく、コーヒーにも気を使った。豆は注文がきてから一から挽き、井戸水でたてる。椅子やテーブルなどの調度品も、最高のものを揃えた。今も残る茶色に輝くアンティークな椅子やテーブルを見れば、その様子がわかるだろう。

当時近くに住んでいた小説家・五木寛之もよく訪れたという。彼の作品に『燃える秋』という小説がある。その導入部分に、[YAMATOYA]が登場してくる。

祇園祭りの宵山の日に、主人公の女性デザイナー亜希は、岸田という男性を何度か目にする。面識のない男性だったが、山鉾に飾られたペルシャ絨毯を熱心に見る顔が、亜希の印象に残っていた。そして次の日、二人はジャズ喫茶[YAMATOYA]で偶然再会する。二人が愛を育むきっかけとなる、重要な場面である。

「違う世界の人と知り合えて、僕の世界はすごく深まった」

とマスターは何度か同じことを繰り返した。店に訪れた小説家やジャズ評論家が、マスターのジャズ観や人生観に影響を与えたのだろう。

ポスター
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けれど、こうも思う。世界が深まったのはマスターばかりではなく、訪れる客にとってもそうであったのではないかと。客達も最高の音楽空間で、自分のジャズ観だけでなく、自分の人生観や感性も深めていったのではないか。そんな思い出深い場所だったからこそ、五木寛之は主人公達が出会う重要な場面に[YAMATOYA]を使ったのだと思う。

ジャズ喫茶が盛んだったころの常連は、今では全国各地に散ってしまった。それでも、彼らが京都を訪れた時は、[YAMATOYA]の扉を開くという。「そういう人達がいるから、今まで続けていけたんです」とマスターは教えてくれた。

そして今日も、空の本当の青さを知りたい蛙達が、[YAMATOYA]の扉を開くのだ。

・コーヒー 500円
・カフェオレ 550円


ヤマトヤ ヤマトヤ
京都市左京区熊野神社東入ル2筋目下ル
075-761-7685
12:00から24:00
水曜休
駐車場:なし
カード:不可

ラッシュライフ [ラッシュライフ]
出町柳
FREE&EASYがジャズの真髄。
ヤマトヤ [ヤマトヤ]
東大路丸太町
世界が深まるジャズ空間。
ムジーク [ムジーク]
等持院
日常とクラシックを楽しむ大人達のカフェ。
ボールアンドチェイン [ボールアンドチェイン]
百万遍
希望を奏でる音楽、それがブルース。
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