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ビルの入り口にはイタリアの国旗と小さな看板。その奥にひっそりあるのが[トラモント]だった。オレンジの柔らかい光りに包まれた店内には、新聞を読みながらくつろぐサラリーマンや、近所の主婦の姿がある。イタリアンレストランとは違う、どこか懐かしい喫茶店のような空間。
「コーヒーはそんなに好きじゃなかったんですよ」。取材を始めてまもなく、マスターの渡部さんがこう言った。びっくりする私にむかってさらに、「料理なんて作ったことなかったんです」と笑って付け加えた。
20年以上も前のこと。旅行会社に勤めていたマスターはいろんな国を歩きまわったそうだ。イタリアのホテルに滞在した時のこと。朝食に出されたエスプレッソコーヒーを飲んで、マスターは初めて「おいしい」と感じだ。そして、街のレストランで心を動かすほどのパスタにも出会った。それらは、マスターが今まで感じたことのないものだったという。
この店のメニューにはパスタが30種近くある。何度も作っては「違う」と作り直しを重ねてできたパスタたちは、すべてマスター自身が感じたイタリアの味が再現されている。
何分も迷った末に注文した「春キャベツとトマトのパスタ」。頬張ると、口元が緩む自分を抑えられない。ガーリックの香りが程よく効いたシンプルな味付けや、キャベツやトマトのフレッシュさと食感を残した野菜の使い方、オイルのバランス、一言も話さずに沸騰する鍋と格闘してあげられた麺の硬さ、どれも最高だった。
取材後、小さなベランダを眺めながら「これもイタリアの田舎町を再現したんです」と笑うのを見て、マスターにとっての“イタリア”がここ[トラモント]なのだなと思った。そして、おいしいパスタに出会ったその日から、[トラモント]が私にとっての一番近いイタリアになった。
文:上田 多真江
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・「あさりとトマトのスパゲッティ」 900円
・「春キャベツとトマトのスパゲティ」 900円
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トラモント
京都市中京区寺町二条角大興ビル1F
075-256-1917
10:00AM〜8:30PM
日休
カード:不可
駐車場:なし
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[猫町]
北白川
日常の隣にある素朴な贅沢 |
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