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春夏秋冬、京都便り
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2月3日。午後から気温がぐっと下がり、厚着のジャケットを通してもなお、寒さが身にしみてくる中、急ぎ足で廬山寺へと向かう。

御所の東側を南北に走る寺町通りから寺の門をくぐると、広くはない境内は見物客でひしめきあっていた。おじいちゃんに肩車をしてもらいキャッキャッとはしゃぐ女の子。カメラ片手に、今か今かと鬼の登場を待ちわびる男性。

「ドン、ドン、ドン…ドドドドドド…」
威勢のいい太鼓の音が境内に響き渡ると、いよいよ追儺式の始まりだ。

ここ廬山寺の追儺式で行われる鬼法楽は、ユーモラスな鬼の踊りが行われることでも知られている。この鬼法楽は、天暦4年(950)に開祖元三大師が、宮中での300日の護摩供をされた時に3匹の鬼が出現し、その3匹の鬼を独鈷、三鈷の法器を用いて退治した故事に因んでいる。また、赤、青、黒の巨大な鬼は、それぞれ人間の心の中にある性質を表しているともいう。すなわち、赤鬼は“貪欲”、青鬼は“嗔恚(しんい*怒り)”、黒鬼は“愚痴”をそれぞれ表しているのだ。

大師堂の中で粛々と経が読み上げられると、見物客も耳を澄ませてじっと聞き入る。そこへ巨大な鬼がほら貝、太鼓に合わせ、足を踏みならしてのっしのっしと踊りながら堂内へ入ってゆくと、一気にザワザワとどよめきがおこり、シャッター音が鳴り始める。鬼の手足の所作は、鎌倉時代から室町時代に流行したという猿楽(さるがく)に由来している。大師堂や舞台の上でひとしきり動き回った鬼も、最後は導師や追儺師の弓に負かされ、よろよろと逃げ去る。そして儀式はおしまいだ。

以前、「鬼は人間の心の隙間に存在しており、それがふっとした瞬間におそろしい形相で現れるものだ」と聞いたことがある。仕事や勉強が自分の思い通りにいかなくてイライラすること。相手が困っているのを分かっていても素通りしてしまうこと。何かうまくいかないことがあると、すぐに落ち込んで他人をひがんでしまうこと。

鬼は私達の生活の外部にいる異形の者ではなく、こうした私たちの普段の生活の中で感じる様々な感情の中にひそんでいるものではないだろうか。心の中の鬼を退治し、新たな気持ちで春を迎えること。それこそが追儺式なのだ。


[廬山寺]
京都市都市上京区寺町広小路上ル北ノ辺町
拝観時間:9:00AM〜4:00PM
拝観料:400円
075-231-0355
アクセス:市バス「府立病院前」を下車、西へ徒歩5分




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