真剣な会話
Q. そう思って始められたのが外国人のための「Zen experience tour」なんですね。
そうです。自分の旅行経験を振り返ると有名な建物を見たり、ただ美味しいものを食べただけの記憶ってどうも薄いんですよ。それよりも旅先で触れた人の温かさや、市場で値切った思い出なんかをよく覚えている。結局、人って旅先で人とふれあったことや五感を使って体験したことが一番印象深く心に残ります。
ですから、京都をより強く印象づけるにはどうすればよいのかと考えたときに、香を焚いた部屋で写経をする、精進料理を作って味わうといった視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感すべてを使って文化を体験してもらうのがよいだろうと思ったんです。
Q. 実際、ツアーに参加された外国の観光客の方はどのような反応ですか?
国によってさまざまですね。中国などのアジア系の方は歴史、フランス人は瓢鮎図※など興味を示すものもそれぞれ違ってきます。けれど必ずどこかに強く惹かれるものがあるようですね。
日本の文化は本当に奥深く厚みがあるものですから、変に海外の方に合わせようとせず、ただあるもの、根づいてきたものをアレンジせずそのまま出してあげればいいのだと思います。
例えば、うちでは精進料理を食べる際、正座がつらければ椅子を勧めますが、それはアレンジではなく気遣い。そこの線引きを間違えてはいけないと思います。
Q. 今後、京都の観光事業の発展のために必要なことはなんだと思いますか?
以前ニューヨークタイムズ主催で行われた世界旅行博覧会に、京都と日本の観光PRをするために行ったことがあります。そのときに印象的だったのが、あちらの方が「What’s new」を期待していること。もう京都が日本の文化の中心で、歴史があって素晴らしい美術品があるってことは周知なんですよ。彼らが京都に求めているのは更に新しい動きなんです。
だから私が「今までは色んな障壁があって実現しなかったけど、ついにお寺で本格的な禅体験ができるようになりました」というと、そこでようやく食いついてくる、といった様子でした。
積み上げた歴史の上で胡座(あぐら)をかくのではなく、常に彼らが何を求めているのかを敏感に感じ取って、それに合ったものを出してあげるという努力が必要になってくると思います。
けれど、先ほどのアレンジの話にも通じますが、単に目新しいというだけでお寺でロックコンサートをしたり派手なライトアップをしたりするのは違うと思っています。ただ表面的なだけの「new」では刹那的な注目を集めるだけで終わってしまいますからね。
※瓢鮎図…足利義持が画僧・如拙作に禅宗に伝わる公案をもとに描かせた水墨画。
- 妙心寺 退蔵院
- 46個ある妙心寺の塔頭の中で、一般公開されている数少ない寺院。瓢鮎図の他、絵師・狩野元信が絵の中の庭を現実にしようと試みて作庭した「元信の庭」、春のしだれ桜をはじめ四季折々の花が美しい「余香苑」など見所も多い。
- 拝観料:大人500円、子ども(小・中学生)300円
- 住所:京都市右京区花園妙心寺町35
- 電話:075-463-2855
- http://www.taizoin.com/

