真剣な会話
Q. 4千人とはケタ外れですね。今日もひっきりなしにお客様が来られますが、今後支店を出したり、どこかに商品を卸したりということはないのでしょうか
全くないなぁ。商売を「もの」と「お金」のやりとりやって考えてないからね。売れたらいい、儲かったらいい、そう考えてしまうから物流が他人まかせになってしもて、作り手と買い手が離れすぎてしまうんやわな。作ってすぐいろんな人に「これどうですか」「こんな色はなじみませんかね」と聞いて改良していく。職人としてはこの製造直売の面白さからは離れられへんとこがあるわな。
スピードも比べもんにならんはずで、たとえば大きな企業であれば、新しいデザインを企画して、会議して、工場に連絡して、材料手配して・・・ってしてるうちに、3ヶ月も半年もたってしまうわな。しかも作る以上は売れなあかんとか、分析したりとか、めんどくさいことがたくさんある。
うちは違うねん。若い職人が「こんなん作りたいんですが」っていう新しいアイデアを出したら、「それはこうしたらいい」ってみんなが反応して、次の日には出来てくる。それをまたみんなで議論して、ある程度仕上がったら1ヶ月実際に使ってみたりする。親しいお客さんに試してもらったりもする。意見を聞いて改良する。柄の長さや色合いも何パターンも試してみる。そうしているうちに店に並べられる商品に仕上がっていく。他の店に比べたらスピードが全然違うんちゃうかな。
Q. まず楽しんで手を動かす。そこから改良して、完成に近づけていく。そういうやり方が、信三郎流であると
そうやな。以前と同じものを作らんとこう、新しいことに挑戦しようっていう気持ちをしっかり共有できてるんが強いんとちゃうかな。もちろん「丈夫で長持ち、シンプルで使い勝手が良い」っていう基本は押さえての話やけど。
Q. ものづくりに対する考え方は信三郎さんが直接伝えるのですか
伝えるというか、自然と出来上がっていったようなもんやな。組織っちゅうもんは面白いもんで、経営者やリーダーの性格がもろに出る。僕は会社を広げていきたいとか、社員を増やしたいとか、売上を上げたいとか、そういうことは全然気にならん。そういう方向性で商売をやっていこうと考えたこともない。
その代わり、みんなが機嫌良う仕事していくとか、独自性をひたすら追求するとか、そういうことには徹底してこだわってるつもりやわ。 [次のページへ]

