真剣な会話
Q. 信三郎帆布さんの「独自性」というのはどういうところにあるんでしょうか
材料と縫製にはとことんこだわってるけど、全てが「そこそこ」っていうことやな。京都の人じゃないと「そこそこ」っていう言葉の意味はわかりにくいのかもしれんけど、これがすごく大切なことやと思ってる。うちはそこそこの規模で、そこそこ良質なものを、そこそこの値段で提供してる店やと思ってる。そこが選んでいただいている理由になってるんと違うかな。
今の時代は、安かろう悪かろうのディスカウント品か、金庫にでもしまっておかなあかんような高価なもんかのどちらかしかない。いろんな人が愛してくれる「そこそこのカバン」が作り続けられたら最高やな。
「これは自信あります」って作り手も売り手も誇りの持てるものを追いかけていきたいし、この「誇りを持てる」ってことが大切やと思うわ。誇りのない商売は、単なるビジネスやわな。人もお客さんもついてこんわな。
Q. 実際ものづくりにあたっては職人さんの採用と教育が必要になってくると思うのですが、そのあたりに何か工夫は
この間も新しい職人を採用したんやけど、「感じのええ人」「50まで数えられる人」という条件だけで採用したわな(笑)。この年になると感じがええかどうかで全てわかるな。
うちは何でもやるから案外上達が早いんや。3年したら慣れるし、5年も経てばミシンが扱えるようになる。もちろん本人の自覚次第で成長が早くもなり遅くもなるけどな。
Q. 今まで長い間、かばんという商品で商売をやってこられたわけですが、商売のコツというのはどんなことでしょうか
ゆっくりやることやね。誇りを持てる仕事を、ゆっくりやること。商品を作って売ってるわけやけど、売る努力をすることと、売り急ぐことは全く違う。売る努力はせなあかん。でも、売り急いだらあかん。広告や何やらで名前だけをどんどん広めるのと違って、商品自体で勝負する。名前ではなくて、商品を見てもらう。商品を評価してもらう。
長い目で商売をしてたら、お客さんも長い目で見てくれる。短期的な成功ばかりを追いかけてたら、短気なお客さんばかりになる。だからこそ、長いこと贔屓にしてもらおうと思ったら、ゆっくりやらんとあかんのや。


