真剣な会話
京都ブームといわれ、和柄や和布を使った商品が溢れる中、今までに無い柄やデザインでひときわ注目を浴びているのが「SOU・SOU(そう・そう)」というアパレルブランドだ。2000年の発足以来、すでに京都に4店、東京にも2店直営店を展開し、海外に輸出も行う。デザイナーの若林剛之さん、建築家の辻村久信さん、テキスタイルデザイナーの脇坂克二さんの3人が出会ったことから始まったこのブランド。コンセプトは「日本の伝統の軸線上にあるモダンデザイン」。日本の伝統技術を使いながらもポップでモダンな商品は、でん伝統工芸品の可能性を広げるとも言える。主力商品の地下足袋や着物、家具など、どれも昔からあるものなのに、少し手を加えるだけで驚くほど“今風”だ。
今回はディレクターの若林剛之さんに、ブランドコンセプトや伝統工芸、仕事観についてお話をうかがった。
Q.デザイナーという職業を目指されたきっかけ、お店を出すまでの経緯を教えてください
高校の頃からファッションが好きで、まぁカッコつけだったんです。将来は東京に行ってデザイナーになるというのが当時の理想でした。高校卒業後、東京の服飾専門学校でオーダーメイドの紳士服の基礎を学んだあと、大手アパレルメーカーの企画パタンナーとして就職しました。そして約6年働いた後独立したのです。最初はアメリカで買い付けたものを扱うインポートのセレクトショップを始めました。その頃は西洋かぶれでしたから(笑)。その後オリジナルブランドを立ち上げるようになり、徐々に店舗のほうも増えて国内のストリートブランド等を取り扱うようになっていきました。僕は基本的に本物志向だと思っています。
インポートを始めたのも、やはり本物の洋服を外国で仕入れようと思ったからですし、オリジナルを作ろうと思ったのは外国のものを”本物で良い物”として売っていることに疑問を感じてきたことと、もっと気の利いたものを自分で作ろうと思ったからです。色やデザイン、サイズも日本人に合うものが作れますし、クオリティの高いものが作れます。ただし外国の洋服のものまねをしているうちは“本物”ではありません。だったら何を作ればいいのか、どう考えればいいのかを追求していきました。結果、日本人デザイナーにしか作れないもの、日本の伝統文化を継承するもの、つまり「日本の伝統の軸線上にあるモダンデザインの創造」こそがテーマだということに気づいたのです。
Q.それがSOU・SOUのコンセプトに結びついているんですね
今の日本は昔ながらの風習や作法に敬意が払われず、経済や技術の発展だけに興味をもっている。これは戦後の高度経済成長期を引きずった価値観です。弱肉強食の西洋とは正反対で、日本はもともと「気配り」と「遠慮」の文化。そしてSOU・SOUのブランド名の由来は、日本人がよく使う「そうそう」という相槌。日本人はこの言葉でまず相手を認めることによってお互いの関係を築き、社会を発展させてきました。昔の職人は受け継いできた技術継承しながらも、さらにそれを時代に合わせて進化させ、文化レベルを上げてきた。それこそSOU・SOUが考える「日本人らしい生き方」だと思うのと同時にそういう物づくりこそ「日本人にしか出来ないこと」だと思います。
脇阪さんのテキスタイルデザインを前にして、建築家の辻村さんと僕が一緒になって、何か今までにない新しいもの、しかも本物が作れないかと思ったのが、そもそもの始まりです。他の人の考えを尊重しつつ自分の意見を言う。SOU・SOUのこのやり方は、自己主張をなにより大切とする西洋文化にはない、日本社会独特のものだと思います。
そして同時にこの精神は、今までもこれからも日本社会にとっては極めて重要なことだと思うのです。[次のページへ]

