真剣な会話
京の台所・錦。そこに200年変わらず店を構える津之喜酒舗。現在8代目となる藤井輝男氏は小学校の文集にすでに『将来の夢は酒屋』と書いたという。藤井氏は先代から店を継いでからというもの、農家・蔵元と三位一体となって商品開発に着手、自店でしか手に入らない酒をつくるなど、商品を仕入れてきて売るという従来の酒屋の枠を軽々と飛び越え、様々な試みを行ってきた。その根本にあるのは、お客が「これが欲しい」と名指しで商品を買いに来る店ではなく、「何かいいのある?」と聞きにくる「ニーズに合わせるのではなくニーズをつくる店」でありたいという藤井氏の熱い気持ちだ。
Q. 藤井さんは店を継いでから、従来の酒屋の枠を越えた商売の仕方をしていらっしゃいますが、最初のころはずいぶん反発があったのではないですか。
それがね、全然なかった。親父が逝く少し前からいろいろ好きにやらしてもらってたけど、親父も、お袋も一度も何も言わなかったですね。でも、ずいぶん我慢していたと思いますよ。親父の代のやり方とはまるで違うことをやっていたし、「こいつこの酒屋をどうするつもりなんやろ」って不安は絶対あったでしょうね。だけど、親父のやり方をそのまま継いでいたら、ダメになっていたんじゃないかって思うことがあります。僕は常々思っているんですが、続けていくということは、革新の積み重ねによって成し得るものなんですよ。変わらないために変わり続けるというか、変わらなければ時代に取り残されてしまうだけですから。
Q.それで着手したのが農家・蔵元と三位一体となっての商品開発ですか。
そういう一面もあります。でもそれだけではなくて、人に誉めてほしかったんです(笑 僕は全国から自分の旨いと思う酒を選んできて売るんですが、その酒をお客さんが飲んだときに誉めてくれるのって、酒を選んだ僕でもなく、原料となる米を作ってる農家でもなく、その酒を実際に製造してる蔵元なんですよね。なら自分も造る方に加わって、一生懸命米を作っている人にも入ってもらって、みんなで誉めてもらおうぜ!ってね。
結果としても、うちでしか買えないオリジナルの酒ができますから、「ニーズをつくる」という考え方にも合致する。[次のページへ]

