真剣な会話

心と心のつながりが作りだす、新しい出会い。新しい空間。[京都国際マンガミュージアム] 上田修三さん

Q. 実際に、プロジェクトはどのように立ち上がったのでしょう?

京都市と精華大学の力だけで設立したわけではなく、地元の自治連合会のご協力によるところが大きいのです。京都は古くからの学校が多く、たとえば家族三代にわたって同じ学校に通っておられる方々もいます。明治維新後に地元の町内の寄付、寄贈によって学校が作られた歴史からもあり、地元の方は自分たちの学校に対して強い思い入れをもたれています。

だから、初めてミュージアムの企画を地元の方にお話をしたときに、やっぱり「何でマンガやねん?」という反応が返ってきましたね。特に年配の方の中には、現在のマンガのマーケットの事情や海外での評価の高さも知らない方もおられる。だから「自分たちの思い出の小学校跡地に、なんで?」という印象をもたれたんです。

そこで、大学でのマンガ文化研究の説明をしたり、学生のつくった作品を見てもらったりと理解してもらうために、地元の方と心のつながりをつくることを心がけました。

こうしたプロジェクトを進める中で、地域との連携は非常に重要です。今回、京都市の理解は得ても、地元民の理解がなければ、設立には至らなかったと思います。

言い換えると「産・学・公・プラス民」の連携の最大の成果がこのミュージアムではないでしょうか。実際、施設が完成して、地元の方をご招待したときには、校舎の形は残しつつも、新しくきれいに生まれ変わったことを喜んでもらえました。

また、京都の中心地には緑があまり見られないでしょう?今では、施設の庭が地元のお子様の遊び場としても利用されています。天気がよければ芝生で館内のマンガを読める「ライブラリーガーデン」も、私たちの考えたスタイルなんです。

Q. 他府県での設立は考えられなかったのでしょうか?

実は、同時期に東京でも同じような構想が出ていたそうです。現に、東京には出版社が集中していますし、作家の方々が作る協会もあり、「東京にこそマンガの研究をする施設を作るべきだ」という意見があったようです。

ただ、東京だと誰が作るのか?どこに作るのか?という経営上、地理上での難しさがあったため、実現にまで至らなかったのではないかと思います。それに東京だとまず、ビジネスとして成り立つかということが考えられるのではないでしょうか。

逆に、京都という場所は、日本の歴史都市として、昔からあるもの、伝統を重んじている街でもあります。ビジネスとしての成功よりも文化価値という面を大事にする、そんな風土だからこそ、京都での設立が可能だったのだと感じています。

Q. 設立した今、どのように考えられていますか?

設立して1年目の今は、まだおひろめの段階です。展示だけではなく、実際手に触れられたり、動的なものを見せる施設というスタイルを追求していって、施設として自立できるようにしていきたいと考えています。

将来的には、このミュージアムをマンガ文化の拠点地として、町おこしができればと考えています。たとえば、室町通りや両替町通りに、クリエイターが居住したり、マンガの貸し本屋、キャラクターグッズのショップが展開されるような「マンガアウトレットロード」がつくれたら嬉しいですね。

Q. 精華大学で新しいものを立ち上げるという3つのプロジェクトに関わってきた中で、感じられたことは何でしょうか

学内だけでなく学外へと、動く規模が大きくなるにつれ、新たな、人との出会いがありました。外部と連携し、新たなネットワークをつなげるためには、相手の心を理解し、心と心でつながることが大事だと思います。

注1:表現研究機構…2001年度、文部科学省「私立大学学術研究高度化推進事業」(オープン・リサーチ・センター)として誕生。新たな表現資源の創造と学術的価値の再構成、そして新しい表現者の育成を目指して研究活動を推進することを目的に、〈文字文明研究所〉〈マンガ文化研究所〉〈映像メディア研究所〉の3つの研究プロジェクトを軸に研究活動を推進。http://www.kyoto-seika.ac.jp/hyogen/index.html

注2:情報館…従来の大学図書館という概念を超えた総合情報センター。一般にも有料にて施設を開放している。 http://www.kyoto-seika.ac.jp/johokan/index.html

  • 京都国際マンガミュージアム
  • 住所:京都市中京区烏丸通御池上ル
  • TEL:075-254-7414
  • 開館時間:10:00〜20:00(入館は19:30まで)
  • 定休日:水曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
  • 入館料 大人500円 中・高生300円 小学生100円
  • http://www.kyotomm.com/