ムガールのナン
初めてごはん以外でカレーを食べたのは
中学1年生のことだったと思う。
夏休みのまっただ中。
「神戸の洋館みたいなホテルで
マッサージとスパを満喫したい」
という脳内乙女な母親の欲望を満たすために
愛知の片田舎から無理矢理連れてこられた神戸。
まだ日傘やらUVケアなどとは無縁で
真っ黒に焼けた腕を太陽にさらして
異人館近くの坂道を歩いていたら
インドカレー屋にたどり着いた。
母が何かの雑誌で見つけてきたらしいその店で
私は生まれて初めて、ナンとチャイを経験した。
母と私は、何度も「おいしいねー」を
くり返していた覚えがある。
それから高校卒業までの5年間。
ナンのおいしさを知った母親が
年に数回思い出したようにどこかで
ナンを買ってくるようになったけれど
インド人が専用の釜を使って焼いたナンとはやっぱり違ったし、
りんごとハチミツが売りのバーモンドカレーには、
ごはんの方がよく合った。
記憶の中の食べ物は、叶わなかった恋の相手のように
年を追うごとに磨きがかかる。
(食べてしまえば「あれ、こんなもんだっけ」で終わったりもする)
だから、「一度だけ食べたことのあるおいしかった食べ物」
を越えるものにはなかなか会えない。
だけど私は、
御池木屋町の「ムガール」であっさり出会った。
薄暗いビルの2階。
薄いベールがかかる客席。
店内に入った瞬間に香るスパイスの香り。
顔を覆えるほど大きなナンは
手で裂こうとすると、もっちりとした抵抗を見せる。
外はカサッとしているが、
中は蒸気がふわっとのぼりそうなくらい
しっとり、ふんわりとしている。
たまたまこの店を見つけて
このナンを食べたとき、私は大げさでもなんでもなく
中1の夏の呪縛から解放されたような気分になった。
肝心のカレーも、ナンの素晴らしさに負けず劣らず。
インドカレーにしてはわりともったりとした感のあるルーで
ナンにしっかりと絡んでくれる。
ナンもカレーもテイクアウトOKで
私はいつもチーズ入りなんを翌日の朝ごはん用に購入していくのだが
これはもう絶品としかいようがない。
中に入ったチーズの塩味がナンの甘味を引き出して
気づくと目を閉じて食べているほど。
(目を閉じて食べると、味覚が増すような気がしません?)
京都はカレーがやや弱いイメージがあるのですが
ここがあるだけでかなり底上げ。
ちなみに、西大路五条にあるサーガルは
ナンではムガールにやや劣りますが
タンドリーチキンとかがおいしいです。
「ムガール」
とにかくナンを食べてください。
あと、ランチはバイキング形式でお得っちゃお得ですが
カレーの味がなぜかやや落ちます。夜のほうが断然オススメです。
あと、トイレにある使い捨ての歯ブラシはごっそり持ち帰らないように!
(前行った時、残らず持ち帰ったヤツは誰だ!)
中京区木屋町通り御池上アイル竹島ビル2F
075-241-3777
12:00-15:00(L.O 14:30)18:00-23:00(L.O 22:00)
火休
(Text by Ryoko Horike)
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