日本人は、欧米人に比べて「(芸術をはじめとした)文化に重きを置かない」といわれる。ニューヨークやパリでは、ギャラリーで購入した作品を家に飾って日常的に楽しむ姿がよく見られるという。
しかし、そんな日本の中にあって、京都は文化に理解を示している方ではないかと思う。祇園の花見小路や宮川町のように、昔ながらの町並みが多く残っていることや、祇園祭や葵祭などの祭事が今も受け継がれていることからも、“よいものは守っていく”という意識が高いことがうかがえる。そんな土壌が、京都にギャラリーを多数存在させる理由の一つとなっていると考えられる。
そして、老舗のギャラリーが多い中、新しくできたギャラリーも存続できているのは、古いものを大事にしながら新しもの好きな京都だからこそ。しかし、ただやみくもに何でも生き残らせているわけではない。およそ20年前のバブル期にハコ(場所)があるからと安易に始めたギャラリーや、7~8年前に起きたカフェギャラリーブームにのって開いた店は、当初の計画通り運営できずに閉めてしまっているところが多い。
京都で生き残っているということは、京都人や、「京都だからいいものを見せてくれるだろう」という思いのもと全国、あるいは全世界からかけつける人たちの期待を裏切っていないことを意味する。
ただ単にギャラリーで作品を楽しむだけではなく、気に入るギャラリーや作家を見つけ、育てる気持ちでギャラリーに通ってみよう。気がついたら、自分の感性が磨かれ、教養も深くなり、逆にギャラリーに育てられているかもしれない。そうして互いに学び歩んでいけるのが、ギャラリーと身近につきあう醍醐味なのだ。
ギャラリーアンテナ

五条堀川交差点近くの、古い佇まいを残すビルの2階に、「ギャラリーアンテナ」はある。なぜこの場所を選んだのかという問いに、「レンタルなのに、
改装できるところが魅力だった」と話すオーナーの奥一富さん。控えめで落ち着いた口調。しかし、「展覧会をして、終わりではない。大事なのは、作家が活動
を続けること」という言葉からも、芸術に対する真摯な姿勢と作家を見守るあたたかい気持ちが伝わってくる。
今年も、5月1日から6日にかけて建仁寺境内の禅居庵において「現世美術館」(http://www.tooma.info/)と題しワークショップや
トークイベントが開催された。奥さんはその企画から携わり、作家をコーディネートするなど、「ギャラリーアンテナ」内におさまらない活動をしている。
ギャラリーの魅力をひもといてみると、その核にはオーナーの信念があることが多い。魅力あるオーナーには自然と作家がついてくる。「ギャラリーアンテナ」がアクセスに便利とはいえない立地のなか続けてこられた理由もそこにあるのだろう。

住所: 京都市下京区五条堀川東入ル中金仏町215-6増田屋ビル2階D
TEL: 075-353-6788
URL:
http://www.antenna-re.info/
【展覧会のスケジュールはこちら】
http://www.antenna-re.info/page/schedule/schedule.html
ギャラリーギャラリー

白塗りの部屋は、3メートルを越す天井高。白く曇らせたガラス窓からは自然光が差す。
「展覧会を行う作家さんが、この空間をどう料理してくれるか毎回楽しみなんです」と話すのは、「ギャラリーギャラリー」を1988年より主宰する川嶋啓子
さん。およそ20年ものスパンで、ここで定期的に展覧会を開く作家がいるのは、自然と周りに人を集めてしまう、川嶋さんの明るく気さくな人柄のためもある
だろう。
「ギャラリーギャラリー」が入るのは、昭和2年に建てられた「寿ビルディング」の5階。四条河原町の交差点から南に約100m歩くと東側に見える白い石造りの建物の中だ。

取材した時期は、現代美術作家・西尾糸穂子(にしおしほこ)さんによる展覧会「a + b + salt」が行われていた。塩水を使った発電装置や、塩の結晶による作品展示が行われ、「塩からこんな美しいものができるのか」と驚かされた(写真上)。
「ギャ
ラリーギャラリー」のオープンは1981年。ファイバーアート(繊維素材を使った芸術作品)の先駆的存在であった小林正和さん・草間喆雄(くさまてつお)
さん・浅井伸一さんら3人の作家仲間がオーナーとなって立ち上げた。当初は、常駐する受付の人も作家もいない、照明もない、電話もない、おまけにビルのエ
レベーターが壊れたまま、という無人ギャラリーだった。ある新聞の美術担当記者は「石畳の階段を登る間に期待感をつのらせ、誰にも気兼ねすることなく静か
に作品と対話できた」無人ギャラリー時代を懐かしむという。
有人ギャラリーに形態を変えた今でも、展覧会における実験性は失われていない。過去には壁・床に直に絵を描く者、舞台装置を設けて演劇を行う者など、さまざまな作家が〝ギャラリー〟〝展示〟の枠にとらわれない自由な発想で空間を彩ってきた。
現在は、ビルのエレベーターが稼動するのでご安心を。観る者に新鮮な感動を与え続ける「ギャラリーギャラリー」。定期的に足を運ぶことをおすすめする。
住所: 京都市下京区河原町四条下ル東側 寿ビルディング5F
TEL: 075-341-1501
URL:
http://www.fiberart-jp.com/
【今後の展覧会のスケジュールはこちら】
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/kictac/Gallery2/Calender/CaleFJp.html
「shin-bi」のギャラリー

京都精華大学が発信する「shin-bi」のギャラリーが入るのは、インテリアショップ「アクタス」やインセンス(お香)のお店「Lisn」(リスン)など、大人向けのハイセンスな店舗が入る複合ビル「COCON KARASUMA」の3階。
デザイン小物や書籍、DVDなどが購入できる「shin-bi」のショップスペースから続くギャラリーは、入るのに勇気や気張りを必要としない。この入り
やすさのため、客層はこどもからおじいちゃん、おばあちゃんまでと幅広い。それを考慮し、刺激の強すぎる展覧会はしないようにしているそう。
しかし、ただ綺麗なだけで引き込まれないような、提案やメッセージ性がみられない企画はしない。「普段はあまりギャラリーに足を運ばない人にもここで楽しん
でもらい、ギャラリー訪問を日常の行動にするきっかけとなれれば」と「shin-bi」ディレクターの田村武さんは語る。
夜は21時まで開いており、同階にある映画館「京都シネマ」の待ち時間に来られるのもうれしい。

↑2007年 6月1日~6月24日に開催される大田ゆら展 「視点・視界」の絵画
住所: 京都市下京区烏丸通四条下ル水銀屋町620 COCON KARASUMA3F
TEL: 075-352-0844
URL:
http://www.shin-bi.jp/
【今後の展覧会のスケジュールはこちら】
http://www.shin-bi.jp/modules/wordpress3/index.php?p=42
ギャラリーアンフェール

「恵文社一乗寺店」は、本やCD、雑貨のセレクトショップともいえる独特の商品ラインナップや、その落ち着いた雰囲気にひかれて、わざわざ電車を乗り継いででも通ってしまうお店。そして、訪れると必ずチェックするのは、雑貨スペースの奥に佇む魅惑の空間。「ギャラリーアンフェール」である。
「チリリ、チリリ」。踏むと、うぐいす張りのように音のする床。これは、フレスコ画で使われる「ラス網」が、床の木材の下に敷いてあるため偶然鳴るようになったものだという。この床が奏でる音も含め、空間全体がかもし出すノスタルジックな雰囲気をうまく活用し、昨今のアートシーンを賑わす作家の展覧会が数多く開かれている。
2007年5月には、絵本やコミックの作品が人気のイラストレーター「100%ORANGE」や、ミナ ペルホネンやサリー・スコットなどのブランディングイメージも手がけるデザインファーム「BLUEMARK」による展覧会が行われた。
今後、見逃せない企画としては、シルクスクリーンの手法を使い、かわいらしい作品を生み出すデザインユニット「2e」による展覧会(開催期間:2007年 9月11日~24日)や、特注傘のデザインと制作をする「イイダ店」(開催期間:2007年10月30日~11月5日)による展覧会があげられる。

住所: 京都市左京区一乗寺払殿町10
TEL: 075-711-5919
URL:
http://www.keibunsha-books.com/gallery_enfer/index.html
【今後の展覧会のスケジュールはこちら】
http://www.keibunsha-books.com/gallery_enfer/topmain.html#sch
同時代ギャラリー

三条御幸町の角に建つ「1928ビル」の1階に入る「同時代ギャラリー」。展覧会は、ジャンルを問わないが同時代性を重視する。取り壊し予定だった元・毎日新聞京都支局のこのビルがカフェ、ギャラリー、ホールとして再生してから、この界隈は活気づいた。
当然、ギャラリーには地元民も、観光客も、老若男女問わずにやってくる。そのため、ここで開催される展覧会は、“美術が専門ではない人でも興味を持ってもら
えるもの”というものが大前提だそう。取材時に展示されていたのは、スペイン在住の画家、加藤力之輔さんの作品。白い壁に淡い色調の絵画が映え、さわやか
な印象だった(写真上)。
手前には、「同時代ギャラリー」より幾分扱いやすい広さで作品の展示と同時に販売を行うことも多い「コラージュ」や、お店を始めてみたい人のためのショッ
プスペース「実験SHOP」がある。こちらの作家層は同時代ギャラリーより幾分若めのようだ。ここで作家の卵を発掘するのもいいかもしれない。

↑「コラージュ」の様子。取材した時期には、テキスタイルデザイナーechinoさんによる展覧会が行われていた。
住所: 京都市中京区三条通御幸町角1928ビル1F
TEL: 075-256-6155
UR L:
http://www.dohjidai.com/top.htm
【今後の展覧会のスケジュールはこちら】
http://www.dohjidai.com/schedule.htm
(冬木 明里)