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おのぞみドットコム 音楽を生かす>CAFE INDEPENDANTS店長/アートディレクター 福西次郎 37歳

好きなことなら、教えてもらうことなんてない。
あるがままに生きてたら、自然にやりたい方へ向かうはず。
  >>CIL(CAFE INDEPENDANTS LABEL)

アンデパンダンをはじめられたきっかけをおしえてください。

このビルは、今「1928ビル」っていう名前やけど、もともと毎日新聞のビルで。まあ1928年に建てられたからその名前なんよね。だからかれこれもう築75年くらいになるかな。うちのオーナーはここの1階を借りて、[同時代ギャラリー]ていうギャラリーを始めたんよね。その頃、僕は絵描いてて、ここで展示会とかしててん。…今も一応画家、なんやけどね。

この建物って、武田五一さんっていう、京都の近代建築の代表みたいな建築家が建てはったんよ。京大の時計塔とか人文棟とかも建てた人ね。だから、ここはすごい重要な建物なんやけど、毎日新聞は、“ハイテクを売りにする新聞社がこんな古い建て物にいるのはどうか”って言うて、ここを建て直そうとしたんよね。“それはもったいない”っていう運動みたいなのが、[同時代ギャラリー]で作品出してる人の中で起こってね。で、うちのオーナーが中心になって、「まず他にいいビルを探して、次にこのビルを売りに出して、そのお金でいいビルを買った方がいいんじゃないか」って、毎日新聞に提案してみたんよね。で、若林広幸っていうすごい有名な京都の若手建築家がここを買ってん。

だから、店をやるっていうよりもまず、建物を残そうっていうことが先、にあったんよね。っていうてもさ、残すのはいいけど、別に何も使われない文化財があっても仕方がないから、今必要なものとして使おうっていうことになったんよ。昔のものの中に新しいものを取り入れて使っていくっていうのは、京都のすごいいいスタイルやんか。




今、アンデパンダンがあるこの地下な、完全に廃墟みたいやってんか。壁も3枚くらいはがして、やっと今のこの壁が出てきてんけど。まあ最初は“下もギャラリーにするかあ”みたいな話とかをしてたんやけど、ギャラリーでもライブハウスでもそうやけど、…芸術って、興味のある人はさ、来るけど、やっぱり閉鎖的なんやね。だから、そういう閉鎖的なものよりも、皆が気楽に入れる場所にしようってなってん。じゃあ、一番生活に密着してる飲食店、それにしようってなった。

うちは1998年にオープンしたんやけど、その頃は御幸町もすごい寂れてて。“寺町の一本向こうの通りって何ちゅう筋やった?”みたいな感じやって。カフェブームみたいなのはなかった時やし。そんな頃に、気楽に使えるだけじゃなくて多様な目的で使えるような、そしてフリースペースのような、でも飲食店、っていうのをすれば、いろいろな人に来てもらえるんちゃうかと思ってん。アートイベントとか、音楽とかを、もっと気楽にさ、意気込まんで見てもらえる場にしたいって話してたね。

そういうアイデアを出してる時に、じゃあ誰がする?ってなって。俺、大工もしてたし、デザインの方も好きやったから、俺がやるわあってなって(笑)。俺は、やるんやったら飲食店とかライブハウスとかって限定せんと、この空間をトータルアートとしてプロデュースしたいって思ってん。でも、お金もそんななかったから、廃材を集めてきてやろうってことになってさ。廃材屋の友達んとこブワーっていっぱい電話してたら一人、草津の方でめっちゃでっかい農家を解体しようとしてる奴がいて。そいつに話をしてん。そしたら“じゃあお前潰せよ”って言われて(笑)、んで潰しに行ってん(笑)。

大工は普通の大工さんやったんですか?

俺は宮大工をやってはった大工さんのところで修行してん。その人がまたヘンな大工さんで、気に入った仕事しかせえへんっていう(笑)。平気で3ヶ月くらい仕事しいひんかったりする。人のアトリエとか、寺も建てたりしてて、ほんまにヘンなことばっかりやる大工やった(笑)。おもろいおっさんやで。
師匠は、[拾得]創ったんよ。だから、何となくこことやり方が似てるねん。木の扱い方とかね。[拾得]行ったら他人事とは思えへん。




福西さんのイメージが、そのままこのお店に現れているわけですけど、スタッフとしてはかなり難しかったんじゃないかと思うんです。ここには、ある意味すごく統一された世界観がありますよね。ここにみんなの意識が向くのは、簡単じゃないと思いました。どういう風にしたいかっていう、具体的なイメージはあったのですか?

オーナーも俺もよくスペインへ行ってたんよ。あの国には、「バル」っていうバーみたいなカフェみたいなんがあるんやけど。1日中飲んでてもいいし、寝ててもいいし、ぼーっとしててもいいっていう店で。店員も、注文聞いてきたりせえへんし、客が自由にいられる空間なんよね。
日本の飲食店ってサービス過剰やんかあ。水持ってきたり、もうええっちゅうのに注文聞きに来たりさ。そうゆうのやなくて、バルみたいなんにしたいと思ったわけ。で、そういう場所でいい音楽があったら一番ええんちゃうかって。みんなが自由におれる空間を考えてたらこうなったな。

うん、私はおしゃれなカフェがすごく苦手なんですね。落ち着かないから絶対入らない。第一私はほおっておいてほしいから(笑)。私、ここに来たら、本読んだり手紙書いたりしてるんですけど、そういうの許してもらえるところですよね。あんまないですよね、こういう空間って。鴨川行ったらあるけど、いかにもやししたくないし(笑)。ここやったら、自分の時間がもてますよね。

そやね、日本ってやっぱり少ないなって思うね。
自由なっていうのは、ここで鳴る音楽に関しても言えるんよね。ここ、最初はノーチャージ・カンパ制で始めてんね。何でそうしたかっていうと、ライブハウスにしてもコンサートホールにしても、音楽が支配してる空間やんか。行く奴はしょっちゅう行くけど、興味ない奴は全然行かんやん。けど、ぷらっと入ったカフェで、突然音楽が始まって、しかも“気に入ったら聴いて”っていうスタイルやったら、もっと音楽が広がっていくかなあと思ってん。お金も、気に入ったら払ったらいいし、気に入らんかったら払わんでいいし。もっと言うたら、帰ってもいいし(笑)。




京都てめちゃめちゃミュージシャンいるし、いいミュージシャンも山ほどいる。けど、知ってる人はめっちゃ知ってるのに、知らない人は全然知らん。そういうのもったいないから、ここからちょっとでも広がってったらおもしろいなって思ってん。
最初は、聡一郎(7月30日記事参照)も言うてたけど、機材も全然なくて(笑)、俺が中学の時にバンドの練習で使うてたアンプとか(笑)、そんなんがゴロゴロってあるだけの状態で。それにカンパ制のライブが果たしてちゃんと継続できるかどうかもわからへんかったし、ほんとに何にもなしのところから始めたんやんけど。
だけど、だんだん“ここの空間で音出せるんやったら、俺らもやりたいな”っていう奴らがどんどん増えていって。あ、これやったら今設備投資して、ちょっとずつでも機材増やしていって、ちゃんと続けられるんちゃうかな、っていう感じになっていったんよね。
最初から音響の奴らも雇えるわけないから、もともとそういうことやってた聡一郎に“ほなお前やれや”って言うて(笑)。ほんまに、料理片手にアンプいじったりしてたんよ(笑)。最初の1、2年くらいは、月に5、6本くらいやったんよね。それがだんだんやりたい人が増えていって。

あぁ〜、ちょっと感動しました。私、イベントやりたいなって思ってるんですね。私も、クラブに行きにくかったんです。“取材で行け”って言われて、やっと行った感じなんです。行けないんですね、ああいう空間には。だけど行ってみて、いいとこはいいとこやし、いい音楽あるっていうのがわかったんですね。だから、お客さんに聴いてもらいたいって思うようになって、イベントしようと思ったけど…、どうしてもお節介みたいになって。自分でいややなって思ってるんですね(苦笑)。だけど、福西さんのやらはる形はすごく自然ですよね。

うん。今言ってたみたいに、いっぺん足運んでみたらさ、“ああ、僕も行けるもんなんやな”ってなるやん?せやけど、ライブハウスって1回目行くのって大変やんか。でもここにいてた時に、ポンっと音楽が始まったら、“ああ、こういうのもありなんやな”っていうのんで、ちょっととっかかりができてさ、じゃあ他のところにも行ってみよかなって感じでなっていくかもしれん。そういうの、いいなと思うねんね。日本人てさ、テレビでやってる音楽しか聴かへんやん?せやけどさ、京都とかにはアンダーグラウンドでやってる特異でおもろいバンドとかいっぱいいるんよね。地方労働者みたいな感覚もってる奴らって奴隷みたいな奴らやし、そういうのじゃなくて。いいバンドをさ、もっと紹介していきたいって思うよね。




俺、小学校の時からパンクやってん。髪の毛バーって立てて(笑)。セックスピストルズとかめちゃ聴いてた。中学校の時とかもめっちゃパンク!
パンクがよかったんは、全然楽器弾けへんでも、表現活動ができるんやってわかったことかな(笑)。“コード3つ覚えたらバンドできるやんか”っていう。『No New York』っていうブライアンEがプロデュースしたアルバムがあるねんな、ニューヨークのアンダーグラウンドのミュージシャンの中から作品を集めたやつやねんけど。それとかほんまに全然楽器とか弾けへん奴も参加してて、“ギュギュギュギュギュギュギュ!!!”ってやってるだけやねんけど、それ聴いた時に“練習しんでも表現活動ができてかっこええんや!!” って思ってん(笑)。

今俺、37歳なんやけど、俺が二十歳くらいの時に、それまでは絵書きぃの、音楽しぃのやってんけど、両方やってられへんなって思って(笑)。それに二十歳の時に子どもできたからあ。大工も、食えへんからその頃からやり始めてんけど。大工しながら絵書いて、音楽やるのはちょっと不可能やなって、じゃあ何か減らそうと。でまあ、絵の方は練習せんでも勝手にできたし、音楽はパンクやったし、端から練習せんでもええっていうのから入ってしまったから、やりたいことがでけへんようになってきてん(笑)、行き詰ってしもてぇ(笑)。それに音楽はうまいやつがいっぱいいるから、もう聴く側に回った方がいいかなっていう感じになって(笑)。聴く側に回ればほんまに気楽でさあ(笑)、すごい音楽よくてさあ。

ですよね、自分がやってると逆にコンプレックスになったりして(笑)。

そう(笑)、自分がやってると、自分ができる範囲でしかよさがわからへんかったりしたけど、一歩引いてさ、客観的に見ると、いろいろな音楽のよさがわかるようになってさ。いろいろな音楽に目が行くようになったね。今とかは、裏方みたいなもんやんか。でもそれがすごく楽しいなあ。こっちは受け入れる側やから、どんな分野からもええやつを何ぼでも引っ張ってこれるわけやん。音楽とか表現とかを、ジャンルワケして考えるのとか全然おもしろない話やと思うねんな。この店でやるのは、ほんまにジャンルレスで、クラシックもありゃあ、ジャズもありゃあ、ロックもありゃあ、ノイズもありゃあっていう。
ただ…、僕がブッキングとかプロデュースとかやってるんやけど、出演アーティストの判断基準は、この場所とどういう風に共鳴するか、この場所でやる意味があるのか、ここで響いていい音楽なのか、っていうところやね。

何でもありやけど、何でもありじゃないっていう、そういうの大事ですよね。

そうやね。ライブハウスやったら月30日埋まらせなあかんやん。あんまし自分が好きでもなかったりとか、やりたくないやつでもやらなあかんよね。それは仕方ないけど。でもうちはライブハウスじゃないから、やりたいものだけやればいいやんか。そういう意味で、ここでやるっていうメリットはあるかなあ。




やりたいのだけするっていうスタイルって、あんま日本にないですよね。やりたくないのでもやるっていうのが常識みたいなんになってて。お金もらってたらそれは当たり前なんですけど。私は福西さんのスタイルがかっこいいと思います。中途半端やったらあかんけど、ちゃうじゃないですか。

そうやなあ。

私の友達で、「仕事しててよかったなんて思えるの?」って言う子がいるんですね。私は「よかったって思える仕事しなあかんのっちゃうの?」って言うけど。

そうです。そのために努力しないといけないんですね。
何のために勉強するかっていうたら、いかに自分が、楽しい仕事を、できるようになるか。楽しい仕事をしようと思ったら、いろいろ大変なことはいっぱいあって。楽しい仕事と出逢うために、いろいろなことを勉強したりとか、世の中に何があるのかっていうのを知ったりとか、どういう生き方があるのか知ったりとか、そのために勉強するわけで。仕事が楽しくないって言うのは、人生を棒に振ってるようなもの。時間を浪費してるだけ、ただ生きてるだけになるから。俺は、やってよかったって思う仕事ばっかりしたいと思う。

この空間はトータルでいいものにしたいって言うてはったんですけど、トータルでするには、それだけたくさんのものを見てこないとダメだと思うんですね。今までどのようなことをされてきたのですか?何から影響を受けたと思われますか?

ほんまに、僕、芸術愛好家なんやんか(笑)。何か知らんけど、子どもの時から、ずっと音楽とか絵画とか、本もすごい好きやし映画も好きやし、芝居も好きやしダンスも好きやし…、そういうこと全般めっちゃ好きなんやんかあ。今でもさあ、うちで月に15本ライブがあるとして、その日に3組出るとしたら、単純に月50組くらい近いものに触れてるわけやん。
俺、ライブハウスに頻繁に行き出したんが中学の時やねんかあ。高校になったら、毎日ライブ観に行ったりしてたし。あとアルバイトで、コンサートのセッティングしたりとか、荷物運んだりしてたんよね。それでステージ観るやんか。その他にも何か観に行ったりしてたんよね。だから、月に50本とか60本とか観るっていう生活をしてたんよね。今でも、よそのハコ行って観るし。だから、そういうことをかれこれ20年くらい続けてきたんよね。




音楽にしても、絵にしても、アーティストが真剣に何かをやったことの答え、答え、答えやんか。じゃあ、そいつはこの答えに行き着くまでに、どんなプロセスを踏んできたんやろかとか、どうしてこういうことをやってるんやろうとか考えながら観ると、おもしろいよね。今度は、じゃあ自分やったら、どうするんやろうとか。すごいいいものを観た時は、自分やったらどういう風にしたらできるんやろうかとか。
音楽やったら、たとえばうちでやるんやったら、この人の音楽はどんな感じでやったらいいやろうとか、誰と組み合わせたらどんないい音楽ができるやろうとか考える、そういうプロデュース業が楽しいね。
ばらばらでやってるミュージシャンも、うちでいっしょにやることで、新しいユニットが生まれたりとかするよね。それに、ここでやってるミュージシャンが、ライブをするだけじゃなしに、何かを残していけたらいいと思ってね。もっとちゃんと責任を果たしていきたいなって思ったんよね。そういうのがこうじて、今、レーベルとか創ったんよね。で、アルバムを作るっていう。

ほんと、ご自分が好きなことをずっとやってきてはりますよね。

そうやね、嫌いなことをすんのが嫌いやねんか(笑)。単純な話やねんけど、ほんまに、好きなことやろうと思ったら、それに対していろいろ努力しなあかんし。好きなことをやるっていうのが一番大変なんやな。でも好きなことなんやから仕方ないっていう。



CIL(CAFE INDEPENDANTS LABEL)
2003年、京都の様々な分野のアーティストが集うカフェから必然的に始められたインディーレーベル。発足から1年弱ですでに6タイトルのCDをジャンルレスに発表。8月には勝野タカシのソロアルバムを発売予定!現在DUB MARRONICS、elementsのMAXのソロなどのレコーディングを進行中。年内発売!

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