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レコード屋のおっちゃんは  
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レコード屋のおっちゃんは

La Voce店長、永井琢也さん
店長・永井さんは、珍しい名盤がそろうコーナーがお気に入りだ。
中でもWilhelm Fortwanglerは相当の貴重品で、ちょっと自慢の一品だ。
La Voceには、貴重・名盤が数多くそろっている。

「’82年にCDが発売されました。それから“LPは無くなる。これからはCDの時代だ”と言われ始め、’88年にCDの売り上げがLPを上回りました。僕はLP世代。こういう出来事がほんとに悲しかった。自分が慣れ親しんで大好きだったものが無くなるなんて、信じられないし、信じたくなかったです」

心のよりどころにしていたものが、音を立てて消えていく淋しさが、こっちにも痛いほど伝わってきた。

「僕は、いてもたってもいられなくてね。CD旋風吹き荒れる勤め先を辞めて、自分のレコード屋を開業することに決めたんです。辞めると決めた時、妻のお腹には2人目の赤ちゃんがいました。当然、妻には言えませんでしたね。黙ったまま開業する準備を進め、仕事を辞めるギリギリに告白しました。反対されてもレコード屋をするつもりでしたが・・・反対されましたね(苦笑)」

「レコード屋は、“LPがなくなるなんて悲しい。残したい”っていう、僕と同じ想いを持った人がいらっしゃることを願って開きました。だけど、100%レコードってお店はなかなか無いですよね」

苦笑いしたその顔に、淋しさがうっすらと滲み出ていた。

「うちが他のお店と違うところ?お客さんから一切買わないってことですね。僕が海外へ行って買ってきたものばかり。だから、ちょっと値も張ってしまうんです。それなのにどうして海外なのか?クラシックって、ヨーロッパで生まれた音楽だから、品物もそこで作られたものが良いと思うんですよ」

 でも、海外では日本盤に価値を置いていて、マニアが集めていると聞く。

「そうですね(笑)。ヨーロッパの商品が良いと思うのは、コンプレックスみたいなものでしょうか。または、他人の芝生は良く見えるっていうやつですかね(笑)」

「クラシックを聴き始めたきっかけは、ローリングストーンズです(笑)。中学生の頃、僕の家は貧乏だったのでステレオがなかったんです。だけど、ビートルズやローリング・ストーンズが大好きでどうしても聴きたかった。母親に買ってくれと頼んだけれど、“阿呆か?そんなもん買えるかいな!あんなうるさい音楽なんて聞かせられへん。不良になる”って一点張り(苦笑)。当時は、4畳半フォークを筆頭にしたフォーク・ブームだったでしょう?一方ストーンズは、エレキでひずんだ音を出したり、ドラムをドタバタ叩いたり・・・そして大麻を吸ったり(笑)。母親とは反対に、僕は、良くないことをしている彼らが、とてもかっこよく思った。なんとかして聴こうと思い、母親に頼み込みました。“ハイドンの弦楽四重奏曲第67番ニ長調「ひばり」を聴きたいからステレオ買って!”ってね(笑)。そしたらこれがうまくいってねぇ、“ハイドンやな、しゃーない”って言うて、買ってくれたんですよ。ハイドンは、音楽の教科書に載ってたから知っていただけで興味はなかったけど、買ったからとりあえず封を開けてみました」

「すると、驚きましたねぇー。第一楽章の主旋律を奏でるバイオリンが素晴らしかった。のびやかで、優雅で。僕はすっかり魅せられてしまった。それ以来、クラシックが好きなんです」

中学、高校、大学と、ずっとクラシック1本で来られた永井さん。レコード屋に就職してもそれは変わらなかったが、<ストーンズが初来日する>というニュースが世間を飛び交った時は、やはり気持ちが昂ぶった。

「自分の中では、ストーンズをもう忘れかけていました。でも、僕にとって彼らは想い出のバンド。同僚と来日の話で盛り上がって“絶対行きたいなぁ”ってなったんです(笑)。同僚5人とストーンズのチケットを買いに行きました。チケット売り場で一晩泊まりましたよ(笑)。若かったなぁ。でもねぇ、僕が行く予定だった’73年の初来日。これ中止になったんですよね。ミック・ジャガーが大麻吸ってたもんだから(笑)。ほんっと、ガックリでした。一晩並んでやっと手に入れたのにね。浮気はするな、ということでしょうかね(笑)」

 永井さんにとって、家族を巻き込んでまで人生を変えさせた音楽って、何ですか?

「音楽は、僕にとって口ずさめるものです。このお店の名前も[La Voce]でしょ?イタリア語で「声」という意味があるんです。クラシックの場合は、口ずさむっていうか、そのメロディを、フフ~ン♪と鼻歌で歌います。そうすると気持ちが穏やかになりますね。クラシック以外にも、吉田拓郎、加川良なんかのフォークから、実は演歌まで好きですよ。あぁ、おっさんぶりをアピールしているようですけど(笑)。口ずさむって、何気ないけど楽しいですよね。音楽は楽しまないと」



La Voce
クラシックばかり、LPレコード7,000枚を置く。ここには、ヨーロッパで直接買いつけしてきたものだけが並ぶ。それゆえ、少々値は張るものもあるが品は確かなもの。貴重盤も数多く揃っている。中でも、LPにもない復刻盤CDも充実しており、それらは、日本では入手困難なものばかり。Romophone、Marston、Symposiumなどを取り扱う。

住所: 下京区綾小路東洞院東入ル 吉村ビル2F 
T E L : 075-341-3330 
営業時間: 0:00PMから12:00PM
定休日: 水曜休
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La Voce店内
本場、ヨーロッパのLPの数々がここに集結。ヨーロッパならではの質感や色遣いがにくく、思わずジャケガイしそうなものばかりだ。

La Voce外観
東洞院綾小路を東ってすぐにある、この白い建物の2階がLa Voceだ。ひっそりたたずんでいるのでわかりにくいが、クラシック好きにはたまらなく幸せな空間だろう。

 


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