
「親父が道具屋をしてたんよ。古道具といっしょにレコードもいっぱいあった。せやからレコード屋をやるっていう意気込みはまったくなくて、自然なことやったよ」と、タバコをくらゆらせながら、おやじさんは話した。レコードの扱いも実に慣れたもの。ものが手に吸いつくようだったのが印象に残っている。
レコードに比べCD生産量が圧倒的に上回っていることをどう思うか?と聞いてみた。「レコードよりも手軽やから、そりゃしゃーないわ。CDの爽やかな音はいいと思うで。せやけど薄っぺらい音やわ。レコードには深みがある。それに温かみがあって、体に馴染む感じがするよ」とにっこり。ここで響いている音を耳にすると、CDとの差を確かに感じた。「針を置いてあげると音を出しよる。そして自分と同じ空気に触れながら回る。生演奏みたいな音に感じるねん」と、こちらが聞く以上にレコードの魅力を話してくれた。
「昔の詞はよかった・・・」と、おやじさんがぽつりとつぶやいた。だが、昔の詞は卑猥なものが多く、CDで再リリースされるとその部分がカットされる。それは当然のことだと私は思う。だけど、どうやら昔の匂いまで削がれてしまったようなのだ。当時も、差別用語はそれとして認識されていた。だからこそ、それをあからさまに歌うことは、禁止されていることをしているようで、どこかスリルがあったのではないか。そういう感覚もCDでは味わえない物足りなさを、おやじさんは感じているのだと思った。もちろん、卑猥な詞は排除すべきことは、承知なのだけれど。
おやじさんは、サトウハチローの詞が好きだ。サトウハチローといえば、歌謡曲「りんごの唄」や童謡「小さい秋みつけた」を作詞したことで有名な人。聴けば、眼の裏にたちまち情景が鮮やかに映し出される美しい詞を書くことで定評があった。「昔は、詞の素材=風情が街中に溢れていた」というおやじさんの言葉にはしみじみ納得した。それは、ここ2、3年の間で、京都の街がどんどん変わり始めたからだ。
多くの町家が解体され、高層マンションがひっきりなしに建ち始めた。由緒ある通りにも、鉄筋コンクリートの建物が脇を固める。京都の変化は、あまりにも激しすぎる。それと相反して、おやじさんの所では、懐かしい風景が今もなお息づいていた。当時のちゃちい印刷技術で刷り上げたレコードのジャケットは、セピアがかった風合いとなり、壁に飾られていた。時々音がつぐむレコードの音は昔の匂いがたっぷりとした。そしてなにより、リアルタイムで生きてこられたおやじさんにこそ、懐かしい風景が刻み込まれていた。月日が流れ流れて積み重なったモノが、計り知れなく大きいものであることを、今更に改めて実感した時間だった。
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カラフルな裸のレコードがそのまま貼りつけられた入り口。店内に入る前から、ここがどんなお店であるかをうかがわせる。古いレコードの香りがただよう店内。壁には色褪せたレコードがびっしりと飾られている。’50年代から’60年代の歌謡曲・流行曲が約8千枚も揃う。当時のジャケットは、印刷技術が未熟だったために色むらがある。ゆえに、1枚ずつ違う表情を見せるからおもしろい。プレゼントを空ける前のようにドキドキしながら、自分だけの1枚を見つけたい。
| 住所: |
京都市左京区東山二条上ル西側 |
| T E L : |
075-771-7475 |
| 営業時間: |
12:30から20:00 |
| 定休日: |
不定休 |
| 駐車場 |
なし |
| MAP |
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市バス東大路ニ条で降りてすぐ。扉にはカラフルなレコード。バスに乗っていても目を引くからすぐにわかります。外観から楽しいお店の中にはこんなレコードがいっぱい↓
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阪本九、吉永さゆり、石原裕次郎などの邦盤、
オールディーズアイドルからビートルズなど
幅広く揃えられた懐かしい洋盤がたくさん飾られています。
年月を重ね、いい味の色合いとなったレコードは、
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今の印刷技術では出せない色合いを見てください。
・・・これらとはガラっと変わり、黛ジュン、由紀さおり、
安西マリアなど艶やかな女性のジャケットもあります。
それはまたかなり魅力的です。妖艶な女って、イイワョ。
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