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おのぞみドットコム究極の絶景>第1回 蛇塚

小さい頃読んでつまらなかった本を、5年経って、10年経って読み返してみる。全く違ったイメージが頭の中に飛び込んできて、別の物語のように感じることがある。なぜこの本をつまらないと感じたのだろうか。疑問の答えを考えるうちに、ひとつのことに気づく。子どもだった自分に、一番足りなかったのは想像力たっだのだ。書かれた文字、描かれた絵が何を意味するのかまで想像ができなかった。面白さを自分で見つけ出すことが出来なかった。だからつまらなかったのである。きっかけが与えられても、空気を吹き入れなければ、想像の風船はふくらむことはない。僕らはそれを体で知っているはずなのに、時々それを忘れることがある。

体力や記憶力は、歳を重ねるにつれて衰えていく。これは事実だ。しかし、想像力に関しては違う。ひとつの言葉、ひとつの出来事を目の当たりにしたとき、頭の中に浮かぶ絵の色は歳を取れば取るほど鮮やかになってゆくのである。大人になってゆく楽しみはここにある。歳を重ねることで初めて見えるものがある。だからこそ、今自分が見ているもの、感じているものだけで何かを判断しようとするのは、賢い判断ではない。大切なのは、いま、見えていないものを見ようとすることだ。視覚だけでは見えないものを見ようとすることだ。

蛇塚遺跡は、太秦の住宅街のど真ん中に残る古墳である。知名度は低いものの、日本で4番目の規模を誇る前方後円墳だ。今は住宅地が並ぶこの場所を当時治めていたのは、秦氏という渡来人だった。このことから、蛇塚遺跡は秦氏の親族、かなりの権力を持った首長クラスの墓ではないかといわれている。

数多くの専門家が謎解きに挑んだが、真実はどこを探しても見つからない。だから、僕らはこのとてつもなく巨大な岩を見て、自由に想像をめぐらせることができる。蛇塚遺跡が作られたと分析される7世紀前半は、墓は小規模になってきていた時代だそうだ。6世紀前半のような巨大な前方後円墳はもう作られていなかった。そのような情勢の中で、あえて大規模な墓を作った理由は何か。そして、この岩はどこからどのようにして運ばれてきたのか。そもそも、誰が葬られていたのか。手がかりはほとんどない。何もわかっていないし、きっとこれからもわからないだろう。

でも、僕らには想像力がある。「わからないこと」を楽しむ力がある。巨大な岩は、それを思い出させてくれる。何も語らないものから、ストーリーを空想する。それは京都を楽しむための第一歩である。



 
 
 

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