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仁和寺は、仁和2(886)年に光孝天皇の勅願により創建され、その2年後、宇多天皇によって完成された真言宗御室派の総本山です。市内北西部に位置し、広大な敷地を誇るこのお寺は、遅咲きの見事な桜で有名です。地質が固いために、背は3メートルほどで止まり、成長した枝は横へ横へと広がっていくのが特徴。満開の時期ともなれば、全国から多くの観光客が訪れます。
そして冬。雪の降る日には、ここにはもうひとつの桜が咲いているかのような姿を現します。幹も枝も、そして花も白い、雪の桜です。春の桜は毎年必ず見ることができますが、こちらの桜は、運が良いときだけ。毎年見られるとは限りません。
市内の喧噪から離れ、雪の降る音すら聞こえてきそうな静けさの中、一心に雪の桜を見つめます。ずっとずっと見ていると、白色から少しずつ桜色に変わっていくかのように感じられます。冬の景色に春の景色が重なってくるのです。
雪は冬におけるもっとも冬らしい風景。そこに春をも感じる不思議な場所がこのお寺です。花園天皇がこの寺を愛した理由が少しわかる気がします。
ノートパソコンと携帯電話の登場は、本当に暮らしを豊かにしたのだろうかと、疑問に思うことがあります。コミュニケーションの範囲は広がり、円滑に連絡が取れるようになりましたが、休みの日にも仕事が追いかけてくるようになりました。
静かに考えないといけないことがたくさんあるのに、現実に手を取られてなかなか時間が取れない。焦りは募り、ますます集中できなくなる。
そんなあわただしさから一歩抜け出して、仁和寺に行きませんか。昔から、ここは落ち着きを取り戻すための場所なのです。
横に広がった枝に積もった雪。それをしっかりと幹が支えている様子は?んだか肩にのしかかった仕事に我慢するサラリーマンに似ている気さえします。そうやって忙しい自分を冬の桜に重ねて、じっと木を見ていると、しばし無心になることができます。
そんなに急いでも、私たちはどこへも行けないのかもしれません。しかし、お金や昇進の誘惑から逃れることも、また難しい。
だとすれば、そういう価値観を自分で認識しつつ、それ以外の範囲にまで自分の価値観を広げていくしかないのではないでしょうか。価値観とはつまり、人生の実感を何に見いだすかということです。
自分が今生きていることの実感を、一体何から感じることができるのか。人生の幅、人生の豊かさを決めるのは、それに尽きるのではないでしょうか。自分の中での価値観が多様になれば、ひとつひとつへの執着はきっと薄れるはずなのです。
小さなことにも感動を見つけられれば、それだけ人生は楽しくなる。雪の桜をじっと見ていると、きっと、心が動いていくのがわかると思います。
今年はもう、春が近づいてきたみたいです。 来年、ぜひどうぞ。
●総本山 仁和寺
京都市右京区御室大内33
075-461-1155
アクセス:JR山陰本線「花園駅」下車徒歩15分
拝観時間: 9:00AM〜4:30PM(拝観受付4:00PMまで)
拝観料 (御殿・一般):500円
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